三井化学が製品化技術確立 TPX用いた細胞培養ツール

2022年07月11日

ゴムタイムス社

 三井化学は7月6日、同社が製造販売する世界唯一の樹脂であるTPXの特徴を生かした新しい細胞培養ツールとして「InnoCell(イノセル、高酸素透過性培養容器)」を開発したと発表した。7月13日~15日に東京ビッグサイトで行われる「再生医療EXPO」にて展示の予定。同社は2022年度末を目標に市場投入を行っていく計画としている。

 同社は、工業生産されるプラスチック素材の中で最も高いレベルの酸素透過性を有すTPX(PMP)を用いて、InnoCellを開発した。TPXを使用することにより、従来の培養プレートに比べ、培養容器底面からの酸素供給を約200倍も効率的に細胞に供給することが可能となった。またTPXが持つ高い離型性に加え、精密加工技術により、細胞毒になる化学物質の溶出が抑えられ、薬剤の収着も起こりにくいことから、研究用途だけでなく創薬アッセイツールとしての活用にも適用可能になると考えられている。

 これまで、東京大学酒井康行教授、千葉大学伊藤晃成教授、マイオリッジとの共同研究により、肝細胞や心筋細胞のミトコンドリア機能の賦活化に起因する代謝活性の向上や毒性感受性の向上が確認されている。従来、酸素要求性の高い細胞の培養では、培地中の酸素を補うため、培養皿を振動させたり、培地量を調整するなど、容易にコントロールできなかった。InnoCellにより、酸素供給を簡便に行える新規in vitro培養法が実現するため、再生医療研究(スフェロイド・オルガノイド)や創薬開発研究(毒性試験、薬物動態試験、薬効試験)が加速されることが期待される。

 同社は今後、強みである素材開発から一気通貫した製品開発により、培養用プレート、マイクロ流路デバイスなどの試験・創薬用途、不織布材料を用いた高品質幹細胞の合成など、細胞テクノロジー領域における顧客課題解決型ソリューションビジネスへの展開を促進していく。また創薬、食品開発における動物実験や動物原料の使用の削減に貢献していくとしている。

 

高酸素透過・低吸着プレートの製品化技術を確立

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