DICは8月3日、同社とエフピコが、プラスチック製食品トレーの完全循環型リサイクルに向け、食品トレーの原料であるポリスチレン(PS)について、世界初の溶解分離リサイクル技術を用いた協業を開始したと発表した。2023年の社会実装を目指す。
2020年11月に、同社とエフピコはポリスチレンの完全循環型リサイクルの取り組みの開始を発表し、両社が保有する技術および回収・リサイクル体制を最大限に活用する新たなモデル構想を打ち出した。同取り組みでは、ケミカルリサイクル技術を用いて、ポリスチレンの原料であるスチレンモノマーに還元する完全循環型リサイクルの実現を目指している。
エフピコグループは、「トレーtoトレー」のリサイクルを掲げ、スーパーマーケットなどに設置された約1万の回収拠点から、使用済み食品トレーなどを回収し再利用している。食品トレーには、用途に応じて白色と色柄付きの発泡トレーがあり、一般家庭から排出される使用済みの白色発泡トレーは、再び食品トレーにリサイクルされている。一方で、色柄付き発泡トレーは、リサイクルした際に再生ペレットが黒色になってしまうため、食品トレーへ再利用する際の使途が限られるという課題があり、ハンガーなど別の日用雑貨品に再生利用されている。
この課題解決に向け、同社は色柄付き発泡トレーの新たな溶解分離リサイクル技術(Dic法)を開発した。同技術は、同社が印刷インキ事業で培った技術や樹脂設計の知見を活用し、黒色の再生ペレットから着色成分を除去し、ポリスチレン生産プラントに投入する方法となる。これにより、色柄付き発泡トレーについても、従来の白色のエコトレーと同様に「トレーtoトレー」のリサイクルが可能になる。
現在、Dic法に関する工業的な検証を同社四日市工場で進めており、2023年には色柄付き発泡トレーなどの市場回収品のリサイクル(PCR)を開始し、並行して進めているケミカルリサイクルとのハイブリッド化を目指す。
同社は今後、注力市場である食品パッケージ用途において、顧客やサプライヤーと協同しサプライチェーン全体で循環型社会の実現を目指すとしている。