ケミチレンの生産能力増強 三洋化成の炭素繊維用集束剤

2022年08月18日

ゴムタイムス社

 三洋化成工業は8月17日、炭素繊維の需要増加に対応するため、炭素繊維用集束剤「ケミチレン」の生産能力を増強すると発表した。

 現在の生産場所である名古屋工場、京都工場に加え、今回新たに鹿島工場に生産設備を設置し、5割程度の能力増強を行う。投資金額は約7億円で、2024年5月の稼働を予定している。

 炭素繊維は、主にプラスチックと複合した炭素繊維複合材料(CFRP)として使用される。CFRPは軽くて丈夫なことから、スポーツ用途から風力発電用風車、自動車、航空宇宙まで、さまざまな用途で活躍している。炭素繊維は髪の毛の10分の1ほどの非常に細い繊維で、そのままでは扱いづらいため、数千から数十万本という繊維を束にして取り扱いやすくしている。その際、炭素繊維表面に塗布し、繊維どうしを束にする働きをする薬剤が炭素繊維用集束剤で、サイジング剤とも呼ばれている。

 一方、CFRPの成形工程には、母体となるマトリックス樹脂を含浸しやすくするために炭素繊維束を解いて炭素繊維を薄く広げる開繊という工程がある。炭素繊維の集束性が高すぎると開繊などの加工性が低下してしまうため、集束剤には「集束性」と「開繊性」といった相反する特性を両立させることが求められている。このほかにも、炭素繊維が損傷してCFRPの強度を低下しないよう、炭素繊維を加工工程の損傷から保護する働きや、CFRPの母体であるマトリックス樹脂と一体化させて高い強度の発現を助ける働きなども求められている。

 同社の炭素繊維用集束剤「ケミチレン」は、繊維を束ねて扱いやすくする「集束性」と加工時に薄く広がりやすくする「開繊性」のバランスに優れた集束剤で、「ケミチレン」で処理した炭素繊維は毛羽の発生が少なく扱いやすいことが特徴となっている。損傷の少ない炭素繊維を均質にプラスチック中に配列させることができるため、高強度で表面平滑性に優れるCFRPが得られる。

 同社は今回の生産能力増強により「ケミチレン」の安定供給を確保し、世界的な需要拡大に対応するとともに、引き続き成長が見込まれる同市場に対応すべく、さらなる能力増強についても引き続き検討を行っていくとしている。

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