エボニック インダストリーズは8月17日、ドイツの生産拠点での天然ガスへの依存度を大幅に低減する取り組みを行っていると発表した。代替エネルギー源を利用することで、化学製品の生産を大幅に縮小することなく、ドイツの天然ガス供給の最大40%を置き換えることが可能となる。代替される天然ガスの量は10万世帯以上の家庭の年間消費量に相当するとしており、これにより同社は自社の生産活動を守るだけでなく、ドイツの天然ガス使用削減に寄与することができる。
取り組みのうち最も重要な施策はマールにあるドイツ最大の生産拠点で実施されており、同拠点に新設されるガス火力発電所では天然ガスではなく液化石油ガス(LPG)を使用して発電を行う予定としている。これにより、マールでのエネルギー供給の確保だけでなく、生産活動の継続も実現できる。さらに代替された天然ガスは、ドイツの天然ガス貯蔵施設に補充することもできる。同社はエネルギー会社bp社からの多大な協力のもと、マールの拠点でLPGの供給を行っていく。
マールの石炭火力発電所も、エネルギー供給の確保に貢献している。当初、この発電所は今年中の停止を予定していたが、法的枠組みの変更に伴い、今後、必要な人員の確保、技術的メンテナンスへの投資、石炭供給の確保を行い、今年以降も運転を継続するとしている。
同社は、全世界で年間約15TWh(テラワット時)の天然ガスを調達しており、その大半は発電と蒸気生成に使用されている。このうち、ドイツへの供給が3分の1を占めている。アントワープ(ベルギー)などドイツ以外の同社拠点へのエネルギー供給は、ロシアからのガス供給とはほぼ無関係となっている一方、ドイツはロシアからのガス供給が途絶えた場合に、化学品の生産に重大な支障をきたす可能性がある。
しかし、このリスクは現在、大幅に軽減されつつある。LPGは、マールにある同社の生産拠点で、C4誘導体(パフォーマンス中間体)を生産する際の副産物として得られるほか、市場からの調達も可能となる。ドイツ・ゲルゼンキルヒェンのbp社製油所との統合ネットワークにより、同社とbp社は既存の生産・物流システムやインフラを利用して、マールでLPGの供給を十分に確保することが可能としている。