東レは8月23日、高強度で高耐熱性、高い表面平滑性を有する、パウダーベッド方式3Dプリンタに対応した真球ポリアミド粒子「トレパールPA6」の量産体制を確立し、販売を開始したと発表した。現有設備は2025年度にフル稼働の見通しであり、さらなる増能力を含め事業拡大を図る。
パウダーベッド方式3Dプリンタは、原料に金属粒子や樹脂粒子を使用し、高い寸法精度で効率良く造形できることが特徴となっている。金属は特に高強度が求められる用途に用いられる一方、樹脂は軽量性やコスト面で優れることから、産業用途に広く使用されている。しかし、現在市場で主流となっているポリアミド12を含む樹脂粒子は不定形状であり、機能評価のための試作品や実用部品に使用するには、造形物表面を研磨などの後加工で処理することが必要で、コストやリードタイムに課題がある。
そこで同社は、「面粗度を改善してほしい」「より厳しい条件下で強度や耐熱性の高い素材を使用したい」という顧客のニーズに応えるため、独自のポリアミド粒子化技術を高融点なポリアミド6に適用し、世界初の真球ポリアミド6粒子となる「トレパールPA6」を創出した。
「トレパールPA6」は高強度や高耐熱、高い表面平滑性を有しており、複雑で精密な形状の造形物を3Dプリンティングすることができ、研磨などの後加工工程も削減可能となっている。
また、粒子が真球のため、強化剤のガラスファイバーを配合しても3Dプリンティングに要求される流動性を確保でき、優れた表面平滑性を維持しながら、高い剛性、強度や耐熱性を両立した造形を実現する。
同社は、同製品の特長を活かし、強度や耐熱性、精密性が要求される自動車エンジン部品やハンドツールなどの用途を中心に、まずは試作品作製向けに提案を進めていく。将来的には、実用部品向けの3Dプリンタ市場への展開を目指していくとしている。