東レは9月21日、シンガポール科学技術研究庁A*STARの先端的半導体研究機関であるInstitute of Microelectronics(IME)と同社が、SiCパワー半導体向け高放熱接着材料の実用化に向けた共同研究を開始したと発表した。
SiCパワー半導体は、省エネルギー・カーボンニュートラルの観点から、車載用途をはじめ、スマートグリッドやデータセンターなどへの拡大が期待されている。特に、さらなる省エネルギー化の観点から、車載向けへより広く適用が開始されている。従来のSi対比、SiCは耐熱性に優れているため、発生した熱を効率よく放熱することで大幅な性能向上につながる。同共同研究では、IMEの設計・試作・評価技術と、同社の材料・プロセス技術を融合することで、半導体の安全性や品質・信頼性に寄与する高放熱接着材料の貼付けプロセスの簡便性と信頼性の向上に取り組み、2025年の実用化を目指す。IMEと同社は、SiCデバイスメーカーへトータルソルーションを提供し、高効率なSiCパワー半導体の普及に貢献していくとしている。
同社は、同共同研究を円滑に進めるために、シンガポールに6月に開所した研究センター「東レシンガポール研究センター(TSRC)」から支援を実施する。
IMEと同社は、これまでにFALDAのラインナップである高放熱接着シートを用いた新規冷却型SiCパワー半導体モジュールの開発を共同で進めてきた。一般的なグリース・半田を用いる放熱接着部材では、冷却器との接触熱抵抗が高く十分に冷却できないため、半導体が故障するという課題があった。そこで、同社素材の適用によって同課題を解決し、接触熱抵抗が極めて低い放熱接着シートを用いた新規SiCパワー半導体モジュールの試作に初めて成功した。高温での耐久性試験では、非常に高い駆動を確認している。
同共同研究では今後、高放熱接着シートの貼付けプロセスの簡便性とさらなる信頼性の向上を目指したデバイス試作・評価を進め、実用化に向けて取り組みを推進していくとしている。