NOKは10月18日、同社の子会社である日本メクトロンが、大阪大学産業科学研究所の関谷毅教授、荒木徹平准教授のグループとの共同研究開発により、生体向け導電性粘着剤を日本メクトロンとして、初めて開発したと発表した。
今回新開発の生体向け導電性粘着剤は、生体と親和性の高い粘着樹脂と導電性ポリマーをテープ加工することで生体密着機能と導電機能の両立を実現した。すでに日本メクトロンが量産化している伸縮FPCを用いた脳波測定シートは、生体密着機能と導電機能の実現にそれぞれ異なる部材が必要だった。同粘着剤は一つで両方の機能を有していることから、低コスト化が図れるうえ、生体信号計測が貼るだけの手軽な方法で可能となる。
また、同粘着剤は素材に水を使わないため乾燥に強く、生物学的安全性評価(ISO―10993)の基準をクリアした人体に優しい素材で作られており、24時間連続装用が可能となる。心電、筋電、脳波など、生体信号計測の用途全般で従来から広く使用されているハイドロゲルシートと同等の導電性を有し、筋肉電気刺激(EMS)の用途でも実用が期待される。
同粘着剤の特長としては、「生体密着機能と導電機能の両立(締め付け器具を必要とせず取り付け時の負荷低減・2つの機能の両立により低コスト化に貢献)」「生物学的安全性評価をクリアし優れたユーザビリティの提供(装着時の不快感なし・乾燥による劣化がなく24時間連続装用が可能・使い捨てのため衛生的)」「カスタマイズ可能(50um以下の薄さで加工しやすく複雑な形状にも対応)」の3点が挙げられる。
日本メクトロンは、将来的には体温計のように日常的に脳波を計測することで認知症の診断や進行度合いが診断できるようになると予想、安全で取り扱いが手軽な当粘着剤が寄与する場面が増えるとしている。同社は今後、日本メクトロンがメディカル、ヘルスケア、介護市場に生体向け導電性粘着剤や当粘着剤を組み込んだ伸縮FPCを広く展開することで、健康寿命の延伸や生活の質(QOL)の向上に貢献していくとしている。