島津製作所は11月1日、位相コントラストX線CTシステム「Xctal(エックスシータル)5000」を国内外で発売すると発表した。
同製品は、一度の撮影でX線の吸収像・散乱像・屈折像という3種類の画像を撮影可能な、国産初の位相コントラストX線CTシステムとなる。物質を透過するX線の散乱・屈折を可視化する「X線位相コントラスト」により、X線の吸収を可視化する「X線吸収コントラスト」を用いる従来のX線CTシステムでは困難だった対象物(ワーク)も観察でき、繊維強化樹脂(FRP)や複合材料、生体材料などの研究開発に貢献する。
X線CTシステムは、X線発生装置と検出器の間で回転するワークにX線を照射することで、その内部を3次元で観察・撮影する装置となっている。非破壊で観察できるため、品質管理や研究開発で使用されている。近年、カーボンニュートラルを目指して新素材の研究開発が進んでおり、「自動車向けの軽量化素材としての炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの内部を検査」「異なる樹脂を組み合わせた新素材の接着接合状態を観察」といった非破壊での観察需要が高まっている。ただ、従来のX線CTシステムでは「視野と分解能の両立」や「吸収係数が近い材料間の高コントラスト観察」が困難だった。
同製品は、回折格子を使用した新方式(X線位相イメージング技術)の採用により、「散乱像」および「屈折像」が撮影可能となる。「散乱像」ではワーク内部の細かい傷や繊維束の流れを広視野で撮影でき、CFRPなど新素材の製造方法の研究での利用が見込まれる。また「屈折像」により吸収係数が近い材料間でも密度差が一定量以上あれば高コントラストで撮影できることから、樹脂新素材や生体軟組織の観察などでの利用も可能となる。
同社は一世紀以上前からX線装置を手掛けており、国内におけるリーディングカンパニーの1つとして知られる。同社は今後も、新しい価値を提供できる製品開発に取り組んでいくとしている。