匠のノウハウをAI化 住友ゴム、NECと協業

2022年11月16日

ゴムタイムス社

 住友ゴム工業は11月15日、同社と日本電気株式会社(NEC)が協業で、タイヤ開発における匠(熟練設計者)のノウハウのAI化に成功したと発表した。

 官能評価の解釈は熟練の設計者とテストドライバーのコミュニケーションにより成り立っており、体系化が非常に困難な領域だった。今回、同社の熟練設計者とNECのデータサイエンティストが共同で、官能評価の解釈に関するコミュニケーションをAIが学習できるデータに体系化することで、官能評価の解釈および改良案考案のAI化を実現した。また、これまではOJTによる属人的な伝承が中心だった匠の思考プロセスを見える化し、経験が浅い設計者への改良案考案過程やノウハウなどの技能伝承も可能にした。同社は今後、同AIの活用により若手設計者をより高度な技術開発に集中させていく。

 近年、製造業では生産年齢人口の減少による人手不足や、熟練技術者・設計者の高齢化が進む中、技術・経験・ノウハウを次世代に伝承するとともにデジタル技術を活用し、これらを見える化することが急務となっている。そこで、同社では、設計や材料開発などのタイヤ開発の様々な業務でAI活用の取り組みを進めている。

 タイヤ開発における官能評価では、究極の完成度を求めてテストドライバーの定性的な評価に擬音が使われることがあり、同じ現象でもドライバーによって表現が異なることがあった。また、官能評価の解読には経験・ノウハウが必要で、評価結果から改良案を導くノウハウが熟練設計者に集中していた。

 NECのデータサイエンティストは熟練設計者と共同でテストドライバーの定性評価を項目化し、評価を読み解く経験・ノウハウを体系化したAIの学習データへ加工した。さらに、熟練設計者は過去に開発したタイヤの官能評価を項目分けした体系化データを作成し、結果に紐づく改良案も体系化した。

 同社とNECは、匠の思考プロセスを見える化することで、若手設計者の理解を深め真の技能伝承を目指すために、グラフAIを活用する計画としている。同社は、若手設計者の開発効率向上を図るとともに、新しい働き方へのシフトを加速し、より高度な技術開発に集中させていくとしている。

 

タイヤ設計フロー

タイヤ設計フロー

思考プロセスを見える化

思考プロセスを見える化

 

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