三井化学は11月16日、同社およびマイクロ波化学が、両社で検討していた環境負荷の低い革新的な炭素繊維(CF)製造に関する基盤技術について、同社名古屋工場内に実証設備を新設することを決定したと発表した。
マイクロ波化学が有するCF焼成技術は、製造工程中で最もエネルギー消費の大きい耐炎化プロセスに加え、炭化プロセスの工程を一貫してマイクロ波により焼成する革新的なものとなっている。今回、マイクロ波化学はこの技術を「Carbon―MX」と名付けた。同実証設備導入において、マイクロ波化学は、「Carbon―MX」技術による焼成ラインの機器一式を同社に供給し、同社は当該技術を含む全体プロセスを構築する。実証設備完工以降は、両社共同で量産技術確立の検討を進める予定としている。
同技術は、対象を内部から加熱できるマイクロ波の特性を生かすことにより、無駄な加熱を徹底的に排除した革新的なプロセスとなっている。従来法と比較し、加熱処理時間が大幅に短縮されるため、焼成プロセスのラインが短くなり、設備をコンパクトにすることが可能となる。また、装置自体の温度が高温にならないため、装置コスト、エネルギー消費、さらには安全面でもメリットが見込まれる。現時点の両社の見込みでは、エネルギー消費量が約50%削減され、将来的にマイクロ波を発生させるための電源を再生可能エネルギーに変更することで90%以上のCO2排出削減が期待できる。
両社は、今後もLCA(Life Cycle Assessment)を通しバリューチェーン全体での低炭素化を目指し、モビリティ分野など今後CFが適用される産業において、カーボンニュートラル推進のニーズに応えていくとしている。