2023年の新春を迎え、謹んで新年のお喜びを申し上げますとともに、年頭にあたりご挨拶申し上げます。
さて、昨年を振り返りますと、我々、石油化学産業にとりましては、多くのマイナス要素が重なった一年でありました。
一点目は、世界経済全般の低迷です。年初は欧米を中心に緩やかな回復基調にありましたが、2月のロシアによるウクライナ侵攻により様相は一変、世界経済は大きな打撃を受けることになりました。
二点目は、日本の製造業に大きな影響を及ぼす中国経済の低迷です。同国の厳格なゼロコロナ政策の継続および夏場の水不足がもたらした電力不足による経済活動の停滞は、中国経済にとり大きなダメージとなりました。12月に入り習政権はゼロコロナ政策を一変、行動制限の緩和へと方針を転換させましたが、今後の同国経済の回復につきましては未だ予断を許さない状況です。
三点目は、資源高・物価高に伴う日本の内需の低迷です。一昨年盛り上がりを見せた、白物家電等耐久消費財の需要に一服感が見られました。更に夏以降の急激な円安も相俟って、エネルギーコストの上昇、食料品・衣料品・日用品など幅広い分野においてインフレ圧力が生じ、国民の生活防衛意識の高まりから、石油化学製品の内需を押し下げました。
四点目として、世界的な物流網の混乱や、半導体不足に起因するユーザー産業の生産活動の制限も挙げられます。特に石油化学産業に影響力のある自動車の減産は、徐々に解消に向かっていますが、未だ完全に回復したとは言えない状況です。
一方、世界的な環境意識の高まりとともに、カーボンニュートラル社会実現に向けた動きが加速した一年でもありました。ロシアによるウクライナ侵攻以降、世界的に資源確保が切実な問題になっていますが、これらを長期的な視点から解決する意味でも、化石燃料に代わるエネルギーへの転換など、カーボンニュートラルへの取り組みはより重要度が増していると考えます。
他にも、米国対中国はもとより、西側諸国対ロシアを中心とした分断により、国際的なサプライチェーンはその再構築を余儀なくされております。
このように取り巻く環境は大きく変化していますが、石油化学製品は、国民生活に欠くことの出来ないエッセンシャルな製品であることは不変であり、経済安全保障の観点から、日本の製造業の上流に位置する我々石油化学産業は、基盤産業として製品の安定供給責任を果たすべく、重要な社会的使命を担っていると考えております。
本年も当協会としては、我が国の石油化学産業の持続的発展に向け、以下の諸課題に積極的に取り組んでまいる所存です。
1.『保安・安全の確保・向上』
石油化学産業の喫緊の課題として、安全・安定操業のための確実な技術伝承の必要性があります。熟練技術者の減少で技術力・運転力の低下が懸念される中、『安全を全てに優先させる』という経営トップ層のコミットメントが必要となります。その具体例として、当協会は昨年「石化協・安全メッセージビデオ更新版(第2版)」を完成させましたが、加えて本年は、コロナ禍で中断を余儀なくされていました保安関連行事を再開、さらに活性化させていきたいと考えております。
2.『事業環境の基盤整備』
当協会は定修会議の事務局を担っておりますが、次回24年度以降の定修日程の円滑な調整や、コンビナート地域における共通課題の解決に努めていきます。さらに規制改革や税制改正要望の吸い上げはもちろん、人材確保についても、機電系エンジニアの採用支援のための共同セミナーなどを継続して実施していく予定です。
3.『グローバル化対応の強化』
再開が決まった「アジア石油化学工業会議(APIC2023)」等国際会議にも積極的に参画し、国際連携を図っていきます。また、経済のグローバル化において、各国・地域の情勢を捉えながら、国際競争で不利にならないよう、必要があれば国との連携についても検討いたします。
繰り返しになりますが、コロナ禍においては、医療品、包装材料への素材提供などを通して石油化学製品が「エッセンシャルな製品」であることが再認識されました。
一方で、石油化学産業は、地球温暖化や海洋プラスチック問題への対応など、循環型社会の構築、持続可能な開発目標への貢献を一層期待されるようになっています。省エネやプラスチック資源循環技術など我が国石油化学産業が得意としてきた技術による貢献に加えて、さらなる革新技術の開発に取り組み、また、企業や業界の枠を超えた社会実装化にも挑戦してまいる所存です。今後とも当協会への一層のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
最後に、本年が皆様にとりまして実り多い年となりますとともに、日本経済の着実な回復・発展ならびに、関係各位の益々のご活躍とご健勝を祈念し、新年のご挨拶とさせて頂きます。