◆経営環境
今年の世界経済は、各国のコロナ関連規制の解除により、本格的な成長軌道へ回帰していくものと想定されるが、ウクライナ情勢とインフレ、欧米の利上げ継続といった国際情勢の他、巣ごもり需要の反動や自動車生産台数の伸び悩み等、各市場・地域の回復スピードは一様ではなく、不透明な状況が続く見通しである。
また、為替変動と労働力・エネルギーコストの地域間格差などにより、調達先や生産地などのサプライチェーンを見直す動きも予想される。一方、サステナビリティ対応の重要性は増しており、リサイクル品の開発とCO2排出抑制や世界的な水不足に寄与する製品・技術の開発は、継続して社会から強く期待されていることから、当社の素材や技術がもつ強みは今後更に発揮されるものと見ている。
経済のグローバル化とデジタル化により市場における競争が一層激しくなる中、競争力を維持・強化することが重要である。産業構造や社会システムそのものが大きく変動する時代において、事業環境、市場動向を徹底的に分析して「変化の本質」を見極めることにより、収益機会を捉えて事業基盤を一層強固にしていく。
◆AP-G 2022の完遂ならびに次期中期経営課題の策定
2022年度は中期経営課題“プロジェクト AP-G 2022”(AP-G 2022)の仕上げの年である。厳しい事業環境下ではあるが、残り3ヶ月においても東レグループの総力を結集し、各課題を完遂していく。
また、今年2023年は、次期中期経営課題をスタートさせる重要な年となる。次期中期経営課題において当社が目指す姿は、AP-G 2022と同様に、「東レ理念」を起点として、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」に示す「「発展」と「持続可能性」の両立をめぐる地球規模の課題への貢献」を通じた「持続的かつ健全な成長」の実現である。その成長戦略を可能にするための価値創造、それを支える人材基盤の強化に注力し、成長投資を可能にする経営基盤強化を進めていく。
◆2023年の経営方針
経営の最優先課題である「安全・防災・環境保全」の徹底に向け、従業員一人ひとりが安全の基本を実践し、日々の地道な安全活動に粘り強く、繰り返し取り組んでいくことが重要である。
コンプライアンスについては、昨年判明した樹脂事業におけるUL認証登録に関する不適正行為により、お客様を含め社会へ甚大なご迷惑をおかけし、会社の信用を著しく毀損した事態を重く受け止めている。今後もお客様を含むステークホルダーに対する責任や社会への貢献を果たしていくために、コンプライアンス意識の向上と組織風土の改善に取り組み、再発防止策の徹底、信頼回復に努めていく。
今年も東レグループ全社員が一丸となって先端材料で社会を変えるという高い志を持ち、「事業を通じた社会貢献」という創業以来受け継いできた「東レ流の経営」を実践し、豊かな社会の実現に貢献することに誇りを持って仕事に取り組むことができるようにしていきたい。