ケミカルリサイクル設備新設 住友化学、25年販売目指す

2023年01月16日

ゴムタイムス社

 住友化学は12月23日、愛媛県新居浜市の同社愛媛工場にアクリル樹脂のケミカルリサイクル実証設備を新設したと発表した。
 同実証設備で製造したケミカルリサイクル品のサンプル提供を2023年春から開始し、使用済みアクリル樹脂の回収・再資源化・製品化までの一貫した資源循環システムの構築を進める。
 アクリル樹脂はプラスチックの中でも極めて高い透明性を有するほか耐候性や加工性にも優れており、自動車のテールランプや家電・水槽・液晶ディスプレイ・飛沫防止板などに広く使用されているが、化石資源を原料としたプラスチックは、製造から使用後の処理までの過程で排出される温室効果ガス(GHG)を削減し、その再資源化を推進することが、喫緊の課題となっている。
 そこで、同社はアクリル樹脂を熱分解し、原料となるメチルメタクリレート(MMA)モノマーに高効率で再生する技術を日本製鋼所と共同開発し、愛媛工場に実証設備を新設した。日本製鋼所の二軸混練押出機を導入し、アクリル樹脂を高品質に再生する技術の実証と量産化の検討を進めていく。リサイクルMMAをアクリル樹脂にポリマー化する工程についてはタイ・台湾・シンガポールにある同社海外工場が受け持つ。
 同実証設備で再生したMMAモノマーの品質は化石資源を原料とした材料と同等であり、製品ライフサイクル全体のGHG排出量は従来品と比べて60%以上の削減が期待できる。
 同実証設備は現時点で300tの生産能力を有しているが、ケミカルリサイクル品に対する需要の伸長に応じて生産能力を増強していく。
 既にアクリル樹脂の再資源化の仕組みづくりにも着手しており、リサイクル原料となる廃材や使用済みアクリル樹脂は同社の長年の協業先である日プラや大手家電メーカーなどから回収していく。
 アクリル樹脂はポリスチレンやポリエチレンなどと比べて市場の流通量が少なく、回収量の向上と効率的な回収の実現が事業課題となることから、今後も回収対象の制限をかけることなく幅広い回収先の開拓に取り組んでいく方針。
 同実証設備から得られたケミカルリサイクル品は、リサイクル技術を活用して得られるプラスチック製品などを対象にした同社ブランド「Meguri(メグリ)」第一号製品として認定される。
 今後は、リサイクル技術を活用して得られる同社のアクリル樹脂は、メグリブランド製品の「Sumipex Meguri」として販売する。また、同社100%子会社である住化アクリル販売が手掛けるマテリアルリサイクル技術を活用したアクリル樹脂のシートについてもメグリブランドとなり、23年1月から「SUMIKA ACRYL SHEET Meguri」として販売予定となっている。
 今後の展開としては、リサイクルMMA及びリサイクルアクリル樹脂製品の2025年販売開始を目指すだけでなく、海外展開としては同社のアクリル樹脂製造拠点のあるタイ・台湾・シンガポールやプラスチック使用量の多い中国、ケミカルリサイクル製品のニーズが強いヨーロッパなどでケミカルリサイクル設備の新拠点建設も計画している。

愛媛工場の実証設備

愛媛工場の実証設備

アクリル樹脂の比較

アクリル樹脂の比較

リサイクルのイメージ図

リサイクルのイメージ図

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