早川ゴムは1月18日、ニシム電子工業、A・R・Pおよび高田機工と共同で「潤(ウル)トワシステム」を開発したと発表した。同システムは打設したコンクリートの品質を確保しながら湿潤養生工程の簡略化を可能とした新技術。このほど高田機工が受注した令和2年度静間仁摩道路大国地区鋼上部工事に新技術を導入した。
早川ゴムでは打設後のコンクリートにおける品質確保を目的とした保水性養生マット「アクアマット」を販売している。アクアマットは打設後のコンクリートへ確実に水を供給するため、水分を保持できる吸水層と保持した水分を揮発させない遮水層から構成されている複層型のマットであり、先駆的な養生マットとして市場に流通している。また、高い保水性能を有しており、高品質コンクリートの作製を実現できると同時に、コンクリートの養生現場での散水回数を大幅に低減できる。
しかし、養生期間が長い場合や夏場の炎天下では、アクアマットの保水状態を視認し、場合によっては再度散水する必要がある。現在同作業は現場作業者が実施しているが、建設業の労働者人口が減少している。現場の作業負荷を低減し環境改善を図ると同時に、構造物の長寿命化に必要な品質の確保を両立して実現する技術の導入は必要不可欠となる。
そこで、同社は国土交通省が進めている、建設現場にICTを活用しようとする取り組みを活用するため、コンクリートの養生においてIoTを導入して現場の作業を遠隔確認・記録し、コンクリート養生での散水までを管理できることが可能な同システムを開発した。
同システムはアクアマットの保水量をセンサーで計測し、定期的にクラウドへデータをアップロードするとともに、保水量に対して閾値を設定し閾値以下になると散水、適切な保水量の確保によって散水を停止するシステム。散水の自動化のために、養生を行うコンクリートの対象面は勾配を有することが条件となる。また、アクアマットの各保水量におけるコンクリートの養生とコンクリート表面の緻密度とに相関性があることが実験的に得られていることから、保水量をデータ管理することで、コンクリートの品質確保も実現している。
同社によると、センサーの値をクラウドに転送する技術は広く使われているが、従来、コンクリートの養生マット(アクアマット)の保水量を測定する技術は存在していないという。また、これまでコンクリートの湿潤養生は相対湿度で管理する指標のみとなっており、空気層を有しない湿潤養生において、相対湿度を計測すること自体困難。そこで本技術では土中水分センサーに着目し、アクアマットの保水量を定量的に計測できるセンサーを開発した。現場へ設置するハードウェアとクラウドへのデータ転送をニシム電子工業、アクアマットの保水量(養生マット含水率)を計測するセンサーをA・R・P、システムを利用した養生におけるコンクリートの品質確認を早川ゴム、現場での作業性の確認を高田機工が担当し、新技術の構築が実現した。
なお、同システムは、2022年8月に公共工事等における新技術活用システムNETISへの登録が完了している(QS-220009-A)。同システムで使用するハードウェア・クラウド・センサーに関しては、計測器・測定器レンタルのレックスが販売窓口となる。
2023年01月19日