光を99・98%以上吸収 産総研、至高の暗黒シート開発

2023年01月24日

ゴムタイムス社

 産業技術総合研究所(産総研)は1月18日、産総研物理計測標準研究部門応用光計測研究グループ雨宮邦招研究グループ長、清水雄平主任研究員、光放射標準研究グループ蔀洋司研究グループ長と、量子科学技術研究開発機構(量研)量子ビーム科学部門越川博主幹技術員、八巻徹也研究企画部長が、漆類似成分のカシューオイル黒色樹脂の表面に微細な凹凸を形成して光を閉じ込めることで、可視光の99・98%以上を吸収する「至高の暗黒シート」を開発したと発表した。

 同技術は、イオンビーム照射と化学エッチングで微細な円錐状の凹凸(光閉じ込め構造)の原盤を形成し転写する方法を幅広い素材に拡張したもので、今回、光吸収率が格段に向上した新しい暗黒シートの開発に成功した。中でも、カシューオイル黒色樹脂は素材内部からの散乱反射(くすみ)が特に少ないという特徴を持ち、光閉じ込め構造によって素材表面の鏡面反射(ぎらつき)も抑えることで、レーザーポインターが消えて見えるほどの深い黒を実現する。従来の暗黒シートと比較して可視光の半球反射率が一桁以上低い0・02%以下となり、触れる耐久性を有する素材としては世界一の黒さを達成した。この至高の暗黒シートは、明るい場所でも沈む圧倒的な黒さを実現でき、背景の映り込みを防止できるため、視覚表現にこれまでになく高いコントラストを提供する。

 産総研は、光吸収率の高い材料の研究開発において、一般環境でも使用可能な耐久性を有しつつ、全ての光を吸収する素材の開発を目指した。その結果、2019年には量研とともにサイクロトロン加速器からのイオンビーム照射と化学エッチングで微細な円錐状の凹凸を形成し、光閉じ込め構造を実現することで、紫外線~可視光~赤外線の全域で99・5%以上の光を吸収する「究極の暗黒シート」の開発に至った。今回、この技術を適用拡大することで、「至高の暗黒シート」の開発を目指した。

 産総研は今後、具体的な用途開発や実用化に向けた検討を進める。将来的には、光の乱反射を極力抑えたいプロ用途だけでなく、身近な場面も含め、光制御・利用技術の格段の性能向上に貢献するとしている。

 

至高の暗黒シートを開発

至高の暗黒シートを開発

原理と作製方法

原理と作製方法

従来シートとの比較

従来シートとの比較

半球反射率の波長特性

半球反射率の波長特性

 

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