ブリヂストンは1月25日、同社と沖縄美ら島財団は、美ら島財団が管理・運営する沖縄美ら海水族館で飼育されている、尾びれを損傷したミナミバンドウイルカ(愛称「サミ」)の人工尾びれを開発したと発表した。
「サミ」は2020年9月、尾びれの損傷に起因する感染症により尾びれが壊死し、治療過程で尾びれの一部切除を余儀なくされた。2004年に美ら海水族館のイルカ「フジ」のために、人工尾びれを開発した実績のある同社と美ら島財団は再び協力し、「サミ」がイルカ本来の泳ぎを取り戻すことを目指して、2021年11月に「サミ人工尾びれ開発プロジェクト」を発足した。
今回開発した人工尾びれは、「サミ」の尾びれを保護する「ソケット・クッション材」、遊泳時に推進力を得るための「ゴム製尾びれ」、そして「サミ」の動きをゴム製尾びれに伝える「板バネ」から構成されている。
同社の開発チームは、美ら島財団より「サミ」のCTスキャンやバイオロギングから取得したデータの提供を受けて人工尾びれの構造設計を行うとともに、柔軟性と剛性を両立するゴム配合の検討を重ねた。両者による1年以上に及ぶ開発・施策・訓練の結果、2022年12月に実施した装着テストにおいて、「サミ」の遊泳能力が大幅に向上することが確認された。
なお、今回開発した人工尾びれには、ブリヂストンが再生可能資源の拡充に向けて事業化を目指す「グアユール」由来の天然ゴムや、マテリアルインフォマティクスを活用して開発を進めている、しなやかさと強靭さを両立する新素材「ダブルネットワークゴム」、再生カーボンブラックなどのリサイクル材料など、タイヤへの適用拡大が期待される最新の技術や知見が採用されている。
現在の「サミ」は、水族館での継続的なリハビリの成果により、尾びれを一部切除した当時に比べ遊泳能力が大きく向上しただけでなく、イルカの社会性を示す仲間とのふれあい行動(ラビング)も観察されるようになった。美ら島財団では引き続き、人工尾びれを用いたリハビリ・遊泳訓練を継続し、「サミ」の生活の質のさらなる向上に取り組んでいくとしている。