住友化学は1月31日、バイオラショナルの一つであり、天然物由来の農業資材であるバイオスティミュラントを手掛ける米国のFBサイエンス社(FBS社)を買収すると発表した。今後、必要な手続きを経て、買収が完了する予定となっている。
バイオラショナルの市場規模は、世界全体で約100億ドルと化学農薬の10分の1程度であるものの、今後も需要の拡大が進む見通しとなっている。バイオスティミュラントは、作物や土壌が本来持つ力を引き出す効果を有する天然物由来の農業資材で、バイオラショナルの中で最大市場規模(約35億ドル)を有し、年率二桁の成長を続けている。また、作物の健全な成長を促進するとともに作物の品質を改善し、収量を増加させる効果がある。さらに、化学肥料の施用量を低減することも可能となる。
同社は、バイオラショナル事業の将来性に他社に先駆けて着目し、2000年に米国アボット・ラボラトリーズ社から当該事業を買収した。以後、米国子会社のベーラント・バイオサイエンス社を拠点として、継続して事業の強化・拡大に努め、14年に米国に微生物農薬原体の製造工場を設立、15年に米国の根圏微生物事業会社を買収、18年にバイオラショナルリサーチセンターを建設、20年にグループの主要海外拠点にバイオラショナル専門の販売組織を設置するなど、戦略的な強化策を加速してきた。
FBS社は、天然有機物を独自の方法で調達、加工したバイオスティミュラントや農薬の開発・製造・販売を行っている。豊富な試験データを元に、50以上の異なる作物に適用可能な製品や技術を保有しており、10年以上に渡って商業的実績を積み上げ、近年は米国を中心に事業を急成長させている。同社は、今回の買収をバイオスティミュラント分野への本格参入の一歩と位置付け、同社グループが持つグローバルフットプリントをはじめとするリソース、ならびに、FBS社が持つ製品ポートフォリオおよび技術ノウハウを組み合わせることによって、バイオラショナル事業の一層の拡大を図るとともに、化学農薬との新たなシナジーも追求していくとしている。