三菱ケミカルグループは2月8日、同社、竹中工務店、エス.ラボ、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)田中浩也研究室が、同社の研究開発拠点であるScience&Innovation Center(神奈川県横浜市)敷地内に、バイオエンプラ「デュラビオ」を用いた3Dプリント樹脂ベンチの共同製作・設置を行ったと発表した。
素材として選定された「デュラビオ」は、植物由来のイソソルバイドが主原料の同社のバイオエンジニアリングプラスチックで、従来のポリカーボネート樹脂と比較し、高い透明性、優れた光学特性などの特長があるとともに、植物由来のポリマーでありながら耐久性や耐候性にも優れた素材となっている。モビリティ内外装部品、光学・電子デバイス部材、日用雑貨など幅広い分野へ展開が進められている。
「デュラビオ」の素材特性を活かし、さらに建築空間に馴染んだデザインとするため、竹中工務店が多面体同士の角度やベンチの座面の水勾配などを踏まえたパラメトリックスタディという手法を用いることで、9種類の異なる形状の3Dモデルを作成した。自然物と人工物の中間のような有機的な三角形で構成された形状のベンチとし、ケヤキ並木や大屋根、建物ファサードといった、複雑な形状の自然物や人工物の一つとして、周辺環境に溶け込むデザインとなっている。
3Dプリントを実現するツールパス設計、およびベンチの模様となる表面特殊効果のテクスチャ設計・デザインを慶應義塾大学SFC田中浩也研究室が担当し、エス.ラボが超大型ペレット式3Dプリンタ「茶室」による造形を行った。また、それぞれのベンチの形状に合わせた照明計画を竹中工務店が行った。夜間は敷地内に点在するベンチがやわらかな光とともに屋外空間を演出する。
同社は、3Dプリント樹脂ベンチそのものの製品化に加え、デジタルファブリケーションによる建築と一体化した空間演出の提案も視野に入れ、これからも各社の共創を進めていくとしている。