産業技術総合研究所(産総研)は1月24日、産総研触媒化学融合研究センターケイ素化学チーム南安規主任研究員が、スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)として知られる高機能熱可塑性ポリマーのポリエーテルエーテルケトン(PEEK)をモノマー単位へ分解できる解重合法を開発したと発表した。
同技術は有機硫黄化合物のチオールと塩基を解重合剤に使用することによって、樹脂の一般的な熱分解温度の600~1500℃を大きく下回る150℃、19時間以内にPEEKをモノマー単位へと分解する。また、重合可能モノマーの前駆体(ジチオベンゾフェノン)とPEEKの原料モノマー(ヒドロキノン)をそれぞれ93%、95%という高収率で得ることができる。PEEKのモノマー単位への解重合は、世界で初めて成功した。ポリプロピレンやポリアミドなどの樹脂を含む場合でも、また、炭素繊維強化PEEKなどの複合PEEK材料を用いる場合でも、PEEK成分の選択的な分解が可能となる。得られたモノマーからベンゾフェノン―ビスフェノールA―交互共重合体などいろいろな高分子を合成できる。今回開発した技術はPEEKのケミカルリサイクルの道を切り開くとともに、PEEK以外のスーパーエンプラ解重合にも応用できると考えられ、安定樹脂材料のサーキュラーエコノミーに貢献する。
同研究により、これまで報告例のなかったスーパーエンプラPEEKの解重合が実施でき、対応するモノマー単位生成物を合成できることが明らかになった。産総研は同研究成果をもとに、すべてのプラスチックをリサイクルする社会の実現に向けてPEEK以外のさまざまなスーパーエンプラ、スーパーエンプラ以外の安定プラスチックの解重合を実施する。また、新たな解重合触媒を開発することで、より効率的な解重合技術を開発し、社会実装を目指すとしている。