東レリサーチセンター(TRC)は2月22日、透過型電子顕微鏡(TEM)による最先端イメージング法である最適明視野走査透過型電子顕微鏡法(OBF STEM)の受託分析サービスを、国内の受託分析会社として初めて開始すると発表した。
OBF STEMは、材料を構成する原子配列を直接観察することが可能な空間分解能を有しており、試料への電子線照射ダメー
ジを低減するために、観察時の電子線照射量を従来よりも大幅に低減させても鮮明な像を得ることができる。同手法の導入により、例えば従来は観察が難しかったゼオライト等の電子線照射に弱い多孔質材料について、吸着や分離などの機能発現に重要な表面・界面の原子配列の特定が可能となる。
今回新たに導入したOBF STEM法を用いたイメージングシステムによって、従来観察法と比較して電子線照射量を大幅に低減させても鮮明な画像を取得できるようになった。これまで可視化できなかった電子線脆弱材料に対しても原子構造を観察できるようになり、新たな知見が得られることが期待できる。ゼオライトやMOFは、イオン交換材料や触媒、吸着材料、分離膜などとして、省エネルギーのために環境分野で幅広く利用されているが、それらの性能や耐久性は結晶構造に大きく依存する。そのため、細孔径や容積等の細孔構造情報、あるいは元素種の分布の正確な理解は非常に重要になる。また、ゼオライトやMOFに限らず、多くの材料は表面・界面に形成される特異的な原子配列が吸着や分離などの機能発現に大きく寄与している。局所領域測定が可能という電子顕微鏡の利点を活かし、材料の機能発現に重要な表面・界面の原子配列の特定が可能になる。
TRCは、カーボンニュートラル社会の実現に対して、材料開発支援の面から貢献していく。今後も「高度な技術で社会に貢献する」という同社の基本理念に基づき、よりいっそうの技術水準の向上に努めていくとともに、最新の先端分析サービスをいち早く提供し、少しでもお客様の製品開発に役立てるよう技術開発に邁進するとしている。