燃料電池用ユニット開発 帝人、燃料電池と圧力容器で

2023年03月13日

ゴムタイムス社

 帝人は3月8日、燃料電池の利用を促進し活用範囲を拡大することを目的に、燃料電池の稼働に必要な機材を一体にした燃料電池ユニットと同ユニットに水素を供給する圧力容器ユニットを開発したと発表した。
 各ユニットは東急建設と共同で実施する、燃料電池を建設工事現場の電源として活用する実証実験にて使用する予定となる。
 燃料電池は、次世代エネルギーとして注目している水素を使用する発電装置であり、軽油・ガソリン発電機と比較して静音性に優れ、CO2などの温室効果ガスを排出せず、臭気なども無いため、さまざまな分野での活用を検討している。
 燃料電池を使用するためには、バッテリーや制御装置と組み合わせた発電機システムを構築する必要があるが、既存の発電機システムはサイズや重量が大きく運搬時には重機が必要となるなど、実用面では多くの課題がある。また、水素を貯蔵するボンベは、発電機システムと安全な距離を保ちながら運搬・設置をする必要があることや、残量確認を適宜行う必要があることから、ボンベを使用する作業員の工数が多くなるなど、運用のしづらさが課題となっている。
 こうした中、英国の Intelligent Energy Limited(以下、IE 社)が開発した燃料電池の代理店販売を進める同社は、グループ会社の帝人エンジニアリングと共同で、利用者のユーザビリティ向上に資する製品の開発を進めてきた。
 今回開発した燃料電池ユニットは、燃料電池の稼働に必要な機材を一体にした可搬型の発電システムとなる。IE社の新型燃料電池「IE-LIFT 1T」を搭載し、小型・軽量化を実現している。
 また、大容量バッテリーを搭載しているため、機器トラブルや水素ボンベの残量不足などで燃料電池が停止した場合でも定格出力で約1時間の稼働が可能。
 同ユニットは通信端末を内蔵しているため、離れた場所からでも「ボンベの残量」や「稼働状況」などのデータを、クラウドを介して携帯端末から確認できる。これにより、ボンベの残量確認に伴う工数の削減や、警報アラームの聞き逃しといったリスクの回避が可能となる。また、独自の算出方法に基づいた「運転時のCO2削減効果」も確認できるため、同ユニットを使用した際の環境負荷低減の効果を見える化することも可能となる。
 圧力容器ユニットは、水素ボンベを 3本搭載できる可搬型の水素燃料供給装置。
 ボンベには、帝人エンジニアリングの複合材料容器「ウルトレッサ」を採用している。「ウルトレッサ」には炭素繊維を使用しており、耐圧性を保ちながら軽量性に優れるため、同ユニットの運搬時における作業員の負荷を軽減する。
 ボンベには高圧の水素を充填しているが、同ユニットの減圧装置により、簡単なバルブ操作のみで圧力を降圧し、安全に燃料電池ユニットへ水素を供給する。
 今後同社は、東急建設がすすめる渋谷駅周辺開発の建設工事現場において、2023年6月より東急建設と共同で燃料電池に関する実証実験を実施し、各ユニットの実環境下における検証を行う予定。検証結果などを踏まえて、2024年春頃の販売開始を目指す。
 同社は、CO2排出量削減などの環境負荷低減に向けて、建設工事用途をはじめとした新たな用途への燃料電池の普及をすすめ、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」を目指すとともに、SDGsの目標達成に貢献していく。

燃料電池ユニットと圧力容器ユニットのコンセプトモデル

燃料電池ユニットと圧力容器ユニットのコンセプトモデル

技術セミナーのご案内

ゴムタイムス主催セミナー