帝人は3月13日、同社が開発した極細の繊維状炭素「PotenCia(ポテンシア)」を独自の紙すき技術を用いてパラ系アラミド繊維「トワロン」と組み合わせることで、業界最薄クラスとなる厚さ50マイクロメートルのガス拡散層(GDL)を開発したと発表した。これにより同社は、市場拡大する燃料電池の小型化・高性能化への貢献を目指す。
同社は、長年培ってきた繊維加工技術を用いて、繊維長が長く高い結晶性を有する極細の繊維状炭素「ポテンシア」を開発しており、その特徴である導電性や熱伝導性などを活かすことのできる用途を探索してきた。そうした中、燃料電池の小型化や高性能化、低価格化のニーズの高まりに伴い期待される、燃料電池の使用部材であるGDLの薄型化やコストダウンに着目した。
今回開発したGDLは、同社が特許を持つ紙すき技術を用いて「ポテンシア」と「トワロン」を少ない製造工程で組み合わせた微多孔構造のGDLとなっている。このGDLは、「ポテンシア」を使用したことで導電性に優れており、また、「ポテンシア」特有の柔軟性により燃料電池内部の触媒層を傷つけない。さらに、「トワロン」を使用したことでGDLの耐久性を維持しつつ、撥水加工が落ちづらい特徴により撥水性にも優れている。これによりMPLを付与することが不要となり、厚さ50マイクロメートルのGDLを実現した。これは、一般的なGDLの約半分以下の薄さであり、「業界最薄クラス(同社調べ)」となる。製造工程の短縮化と、大幅な薄型化に伴う使用原材料の削減により、製造コストや環境負荷の低減に貢献する。
同社は今後、今回開発したGDLのガス拡散性や導電性など、燃料電池の性能向上に欠かせない項目の検証を進めていく。また、製造工程の短縮や使用する原材料の削減に伴う環境負荷低減への貢献度についても検証を進めていく。また、今回開発した新たなGDLの提供に留まらず、燃料電池の小型化や高機能化を目指す企業と共に、GDLを用いた新たな電極膜などの共同開発を目指していくとしている。