再エネ電力分別供給システムを開発 出光興産が4月から実証開始

2023年03月31日

ゴムタイムス社

 出光興産は3月29日、再生可能エネルギー由来の電力(再エネ電力)を調達できる施設において、供給する電力を分別(再エネ電力/系統から送電した再エネ以外の電力)し、電力使用者がどちらを使用するのか自ら選択できる分別供給システム「IDEPASS」(イデパス)を開発したと発表した。
 あわせて、イデパスで分別した電力から、EVユーザーが自ら再エネでの充電を選択できるシステム「再エネチョイス」を開発し、両システムを使用した実証を2023年4月より開始する。
 2050年カーボンニュートラル社会の実現に向け、国内でも多くの自治体や企業において使用電力を再エネ電力に切り替えるニーズは拡大している。電力を使用するユーザーが主体的に再エネ電力を選択できることに加え、「環境価値」の観点から調達電源の属性を正確に把握するトレーサビリティ(追跡可能性)も重要視している。
 同社はこれまで地域創生と社会課題解決を目的に太陽光発電・EV・蓄電池等の最適制御によるコスト・環境負荷低減等に資する再エネチョイスTMシステムの構築を行い、さまざまな自治体と連携して「エネルギーの地産地消」に貢献する取り組みを行ってきた。
 これらの知見をもとにこのたび、再エネ電力のさらなる普及と地産地消を目的として「イデパス」「再エネチョイス」を開発した。
 イデパスの特長は、テナント、部屋単位でも再エネ電力の使用を選択可能という点と、EV充電でも再エネ電力を選択可能(再エネチョイス)という点。
 これまでショッピングモールや空港、庁舎等の単一施設に供給する電力については、施設内に入居する複数のテナントや部屋単位での使用電力選択はできなかった。
 電力分別供給システムイデパスは、ブロックチェーン技術による高いトレーサビリティとデータの信頼性に加え、従来の類似システムよりも細やかな「分別単位」(分電盤設置単位)で供給電力を分別・可視化し、電力を分別供給することが可能となる。これにより、テナントごと、分電盤設置状況によっては部屋ごとに、ユーザー自身がどの電力を使用するのかを選択することができる。
 現在、電力の取引は一般的には30分単位で行われている。イデパスでは、発電から消費の流れを捕捉する電力取引管理システムを1分単位で運用することで、EV充電のようなごく短時間の電力供給においても再エネ電力の供給を選択することができる。充電にあたっては、同じく同社が開発したEV充電システム再エネチョイスを使用する。
 再エネチョイス は、再エネ電力を一定比率で含む充電を選択してEV充電できるシステムであり、環境意識の高いEVユーザーのニーズに対応する。
 イデパスが提供する社会的価値としては、再エネ電力の使用機会拡大による環境意識の喚起と、電力種別ごとの料金反映により、再エネ電力事業の持続・成長性に寄与という点。
 イデパスの導入は、自治体や企業など再エネ電力の使用を希望するユーザーを中心に再エネ電力の普及拡大に寄与する。また、施設内のテナント様などにも再エネ電力の使用機会が拡 大することにより、これまで再エネ電力を志向されなかったユーザーの環境意識を喚起・向上し、再エネ電力のさらなる普及を促進する。
 分別供給により、ユーザーが使用した電力種別(再エネ/再エネ以外)ごとの使用量に応じたコストを電気使用料金に細かに反映することができる。再エネ電力を選択するユーザー、 またはそうでないユーザーに、ご使用の実態に応じた適正な料金を負担してもらうことで、電力供給にかかるコストを回収し、再エネ電力事業の継続性および成長性の向上に寄与する。
 今後の展開として、2023年4月より「イデパス」「再エネチョイス」を使用した電力供給事業の実証を開始し、 実証により事業性の検証・評価を行う。
 並行して、カーボンニュートラル達成に向けた 総合的な施策としてイデパス、再エネチョイスのみならず、オンサイトPPA用太陽光パネル やEV充電器等のパッケージ導入を、全国の自治体や企業に提案していく。本パッケージは、2023年度より全国で展開していく予定となる。
 加えて、イデパスシステムの販売・ライセンス等の事業化も視野に入れている。
 なおイデパスが分別供給する再エネ電力は、当初段階ではオンサイト電源で発電された電力のみとなるが、地域内にあるオフサイト電源で発電された電力についても今後、分別供給の対象とする見込み。これにより、ショッピングモールや空港、庁舎など比較的大規模な施設のみならず、オンサイト発電設備を保有しない比較的小規模な施設のテナントや、 集合住宅に居住する区分所有者においても再エネ電力の利用を促進する。
 同社は 2050年カーボンニュートラル社会の実現に向け、2030年ビジョン「責任ある変革者」、2050年ビジョン「変革をカタチに」を掲げている。昨年11月に発表した中期経営計画 (対象年度、2023~2025年度)では、「一歩先のエネルギー」「多様な省・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」の3 つの事業領域の社会実装を通して「人々の暮らしを支える責任」と「未来の地球環境を守る責任」を果たす。
 同社事業ポートフォリオ転換に向けた3つの事業領域本取組みは、地域の暮らしを支えるエネルギーの多様化・低炭素化を目指すものであり、3つの事業領域における「スマートよろずや」の事業開発と社会実装に向けた取り組みと位置付けている。

イデパスによる電力分別供給イメージ

イデパスによる電力分別供給イメージ

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