昨年は、東日本大震災、それに伴う福島原発事故と電力需給の逼迫、そしてタイの大洪水と、度重なる未曾有の災害が自動車産業にも甚大な被害をもたらし、決して忘れることのできない試練の年となりました。
しかしながら、自動車産業は一丸となって、これらの苦難を乗り越えてまいりました。そこで学んだ多くの教訓を糧として、今後の成長に繋げてまいりたいと存じます。
私ども自動車産業は、豊かなクルマ社会の実現に向けて、また、日本の基幹産業として震災によって大きな打撃を受けた日本経済の復活と発展に貢献すべく、下記の3点を事業の柱として全力で取り組んでまいる所存ですので、本年も、皆様方の一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
〈日本の「ものづくり」の維持に向けて〉
日本の自動車産業が熾烈な国際競争を生き抜く上で、長年の歴史の中で培われた日本の「ものづくり」こそが最大の強みであり、それを維持していくことが私どもの生命線と言っても過言ではありません。
しかしながら、歴史的な円高をはじめ、EPA/FTA締結の遅れ、高い法人税など、いわゆる「六重苦」により、日本国内で生産活動を継続することが極めて困難になっており、空洞化に向けた動きが加速しておりますが、今ならまだその動きを反転させることができると確信しております。
空洞化の進行に歯止めをかけ、日本の「ものづくり」を維持していくために、円高への抵抗力を高めるなど企業努力を継続していくとともに、海外企業と同じ条件の下で競争できる環境の確保に向けて、政府に対し、引き続き「六重苦」の緩和、解消を働き掛けてまいります。
〈国内市場の活性化に向けて〉
日本の自動車市場は、20年以上にわたって右肩下がりの縮小基調にあります。
このまま市場の低迷が続けば、国内の「ものづくり」の基盤が失われ、ひいては、日本の経済や雇用にも大きな影響を及ぼしかねないことから、国内市場の活性化は喫緊の課題と捉えております。
そのために、私どもは魅力的な自動車を提供するとともに、お客さまにクルマの夢・楽しさを感じていただけるよう最大限の努力を続けてまいりますが、一方でお客さまの重い負担となっている自動車関係諸税を簡素化・軽減することが国内市場を活性化するためには極めて重要です。
昨年末、政府から、自動車重量税の一部軽減とエコカー減税の3年間延長、更にはエコカー補助金の復活が打ち出されました。私どもとしては、これらの措置を活用しながら市場の活性化に努めてまいります。
しかしながら、自動車ユーザーの期待は、既に課税根拠を失っている自動車取得税と自動車重量税の廃止であり、引き続き、その実現に向け尽力してまいります。
また、私どもは、低炭素社会の実現に向けて、環境性能に優れた自動車の開発を進め、積極的に市場へ投入しており、今後も更に加速してまいります。
政府が掲げる「2020年までに新車販売に占める先進環境対応車の割合を80%とする」との高い目標を達成するためには、お客さまがこれらの自動車をお買い求め易くすることが不可欠であり、インセンティブ措置を強く求めてまいります。
〈安全・安心で、快適なクルマ社会に向けて〉
近年減少を続ける交通事故死傷者数の更なる低減に向け、「予防安全」「衝突安全」の二つの視点から、先進安全技術の研究開発に全力で取り組み、より安全なクルマを世に送り出していくことは、今後も変わらず、私どもの大きな使命と認識しております。
加えて、交通安全啓発活動や道路環境整備への提言など、交通事故発生原因の3要素である「クルマ」「人」「道路」それぞれの観点からの取り組みを推進し、政府が掲げる「世界一安全な道路交通」の実現に貢献してまいります。
クルマは、「単なる移動・運搬手段」から「人々の暮らしを豊かにする生活必需品」へと、時代のニーズに合わせて進化してきました。
これからも私どもは、増加する高齢者の生活支援をはじめ多種多様なモビリティ・ニーズに応えていくとともに、エネルギー供給や情報通信のネットワークの一翼を担う社会インフラとして、クルマの価値をより一層高め、安全・安心で、快適なクルマ社会を構築してまいりたいと考えております。
2012年01月16日