価格転嫁実施で増収に 原料11社のゴム関連部門

2023年05月28日

ゴムタイムス社

 合成ゴム・化学メーカーの23年3月期決算(クラレは23年12月期第1四半期決算)から、合成ゴムやエラストマー原料を手がける化学部門の現況をピックアップした。原料価格の上昇に応じた販売価格の改定を行い、各社増収となった。利益面は前年を大きく上回る企業がある一方、減益または損失となった企業もあり明暗が分かれた。
 ◆日本ゼオン
 エラストマー素材事業の売上高が2222億3000万円で同10・8%増、営業利益は101億8400万円で54・8%減。合成ゴム関連は原料および燃料高騰分の価格転嫁が進み、売上、利益ともに前年同期を上回った。また徳山工場の定期修繕の影響により、前年同期で出荷量は減少したものの、定期修繕後は出荷量は回復した。
 ◆三井化学
 エラストマーや機能性コンパウンドが含まれるモビリティソリューション部門の売上収益は5216億円で同30・5%増、コア営業利益は493億円で同62・3%増。エラストマーは、太陽電池封止材は販売が堅調に推移した。
 ◆住友化学
 合成ゴムや熱可塑性エラストマー、スーパーエンジニアプラスチックなどが含まれるエネルギー・機能材料の売上収益は3425億円で同8・2%増、コア営業利益は152億円で同24・4%減となった。円安に伴う輸出手取りの増加はあったが、原料価格の上昇に伴う交易条件の悪化などで減益となった。
 ◆旭化成
 合成ゴム・エラストマーが含まれる環境ソリューションの売上高は5598億円で同7・1%増、営業利益は23億円の損失となった。合成ゴム・エラストマーの事業環境について「22年度は順調に進捗し、収益は予算通りに着地したが、23年度は需給環境が改善に向かうには時間がかかるとみて、23年度は22年度比で若干の減益になるのではないか」(同社)とみている。
 ◆UBE
 エラストマー事業が含まれる樹脂・化成品事業の売上高は622億円で同2・3%増、営業利益は24億円で同89・7%減となった。エラストマー事業は、原料ブタジエン市況の上昇等により販売価格が上昇し増収となった。
 ◆デンカ
 エラストマー・インフラソリューション部門の売上高は1238億2700万円で同15・9%増、営業損失は11億円(前年同期は34億7300万円の損失)となった。クロロプレンゴムは販売数量が前年を下回ったが、原燃料価格の上昇に応じた販売価格の改定を行い増収だった。
 ◆東ソー
 クロロプレンゴム(CR)の22年度は主に半導体不足による自動車減産の影響を受けて国内外ともに販売数量は減少した。23年度のCR需要については「上期は引き続き低調に推移すると想定するものの、下期以降は自動車や手袋向けも回復に向かうとみており、CRの販売数量は回復に転じる」(同社)としている。
 ◆クラレ
 イソプレンの売上高は157億8000万円で同2・8%増、営業利益は1億9000万円で同92・9%減。イソプレンケミカル、エラストマーは、昨年後半から続く需要減退の影響により、販売量が減少した。
 ◆信越化学工業
 シリコーンなどが含まれる機能材料事業の売上高は4933億円で同24・7%増、営業利益は1306億円で同37・8%増となった。
 ◆ダイキン工業
 フッ素ゴムは自動車関連を中心に需要が堅調であることや、原材料市況高騰を背景に価格政策を実施したことで、売上高は前期を大きく上回った。
 ◆大阪ソーダ
 機能化学品の売上高は531億800万円で同15・8%増となった。合成ゴム関連では、エピクロルヒドリンゴムはインドで環境規制対応向けの需要が増加して増収となった。アクリルゴムは国内外で新規採用が進み、アジア向けを中心に販売が増加して増収となった。

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