旭化成は5月16日、産業用3Dプリンティングソフトウエアを開発するイスラエルのスタートアップCastor Technologies Ltd.(「CASTOR社」)への出資参画の決定を発表した。同社はCASTOR社が提供するサービス・ソフトウエアを利用するだけでなく、出資参画によって、同社が提供する樹脂CAE技術サービスとCASTOR社が提供するソフトウエアが生み出すシナジー効果を、今後追求していく。
3Dプリンティングは付加製造(Additive Manufacturing)とも呼ばれる、材料を積層しながら造形する新しい加工法であり、複雑な形状の部品作成に適している。3Dプリンティングの市場規模は2015年以降、年平均20%超成長しており、今後も同市場は新しい技術・活用方法の出現や、これまで主流だった試作評価・治具金型向け利用だけでなく最終製品の量産利用が進むことにより、今後は年平均約24%成長する可能性が高いと言われている。(参考文献:「HUBS, 3D Printing Trend Report 2022」)
現在では多くの場合、既存の製品に対して3Dプリンティングを適用する際には、人の判断で対象部品を選択し、3Dプリンティングの可否を決定し、場合によっては形状修正を加える等の作業を行っているが、Castor社が独自に開発した高度なアルゴリズムを適用することにより、例えば一製品を構成する数千の部品から成るBOM(Bill Of Material:部品表)およびCAD(Computer Aided Design)図面から、3Dプリンティングに適した部品を自動的に特定する、あるいは3Dプリンティングに適した形状への修正提案を受けることができる。さらに、解析した部品の製造リードタイム、コストおよびCO2排出量を算出することによって、顧客の製造プロセスの最適化に貢献する。
同社は、エンジニアリングプラスチック製品を中心とした樹脂CAE(Computer Aided Engineering)技術サービスにより、顧客の製品の設計開発を総合的にサポートしてきた。同社の樹脂CAE技術サービスはその精緻さに定評があり、今後さらに顧客の時間軸で適切に要望に応えるという観点から、CASTOR社が提供するサービスである、簡便な部品成立性・製造コストのシミュレーションに着目。CASTOR社が提供するサービス・ソフトウエアは同社が提供する樹脂CAE技術サービスの前工程にあたり、同社の技術とかけ合わせることで、より高度なシミュレーションを自動化できる可能性を秘めている。今回のCASTOR社への出資を通じてさらなるCASTOR社の技術理解を深め、両社のサービス拡張に向けたPoC(概念実証)を進めていく。
同社はCASTOR社と3Dプリンティング技術のさらなる発展と普及を共に目指し、世界の顧客の要望に合わせて最適かつ持続的なモノづくりができる社会の実現を目指していく、としている。
2023年05月18日