DICは5月25日、熱マネジメントソリューションを提供するPhase Change Solutions Inc.(PCS社)と、日本のインフラ分野向け材料の商業化に向けて戦略的パートナーシップ協定を締結したと発表した。今回の協定により、両社はPCS社のBioPCMを搭載した製品を、日本のオフィスビルや、産業施設・物流施設といった熱マネジメントが求められるインフラ業界に展開し、CO2排出量の削減を目指す。
PCS社は、BioPCMと総称される同社独自の相変化材料(Phase Change Material)を通じて、生鮮品や医薬品の輸送業界や、オフィスビル、通信シェルター、データセンターなどのインフラ業界において、エネルギー、環境、社会の重要な課題を解決するための先進的なソリューションを提供している。
BioPCMをベースとしたインフラ分野向け製品は、余剰熱エネルギーを吸収・放出する事により、空調システムの負荷を低減させる。その結果、使用電力量を低減し、CO2排出量の削減に寄与する。本製品は既存施設の壁や天井に容易に施工する事ができる。このため、米国ではオフィス・通信シェルター向けに1万ヵ所以上の施工実績を有し、15~30%の空調消費電力の低減を達成している。
同社グループは、長期経営計画「DIC Vision 2030」において、サステナブル戦略を推進し、カーボンニュートラル社会の実現を目指している。その実現に向け、「サステナブル製品」の拡大を掲げ、自社製品の開発だけではなく優れた技術を持つスタートアップとの協業を積極的に模索してきた。
この様な背景の中、「人と地球のためのスマートマテリアルの開発」をビジョンとして掲げ、サステナブル製品を保有するPCS社と、日本における素材の製造、販売のノウハウを保有する同社は、互いに重要なパートナーになり得ると考え、協業に至った。すでに米国で社会実装済みの技術を、日本国内向けにPCS社と共同で実証実験・市場展開を進める事で、両社の共通目標であるカーボンニュートラル社会の実現を目指す。
同社常務執行役員、新事業統括本部長、髙野聖史氏は、「エネルギーコストが上昇する中で、CO2排出量の削減が求められる環境下において、循環型のエネルギー施策が重要であり、熱マネジメントもその一つ。市場、顧客の課題を掘り下げて、PCS社のソリューションとのマッチングを通じ、カーボンニュートラル社会に貢献できるよう努めていく。」とコメントしている。
PCS社CEO Govi Rao氏は、「世界有数の化学会社であるDICと提携し、気候変動や人々の健康といった日本における壮大な課題に取り組むために、当社の実証済みの技術やソリューションの商業化に向け協業できることを非常にうれしく思う。」とコメントしている。
PCS社は、任意の温度で熱エネルギーを吸収・放出するように設計したBioPCM技術を有しており、この技術を搭載した製品は、オフィスビル、通信シェルター、データセンターなどの空調システムにおけるCO2排出量の削減や、医薬品や食品の輸送における温度管理を可能にする。BioPCMはマイナス75℃から175℃の温度範囲のうち、目的とする温度での製品設計が可能となる。また、吸熱時にゲル状態となるため、蓄熱成分の漏れのリスクが無く、難燃性規格(ASTM E84、UL723)も取得している。加えて、米国農務省(USDA)の BioPreferred認証を得ており、環境に配慮し設計していることも特徴の一つとなる。
同社は日本で有数のファインケミカルメーカーのひとつであり、同社グループの中核企業となる。同社グループは、世界全体でSun Chemical Corporationを含む190以上の子会社によって構成され、60を超える国と地域で事業を展開している。
グループ全体として、人々の生活に欠かせない包装材料、テレビやPC等のディスプレイに代表される表示材料、スマートフォンなどのデジタル機器や自動車に使用される高機能材料を提供するグローバルリーディングカンパニーと認知されている。これらの製品を通じて、社会に安全・安心、彩り、快適を提供している。
同社グループは持続可能な社会を実現するため、社会変革に対応した製品や社会課題の解決に貢献する製品の開発にグループ一丸で取り組んでいる。連結売上高1兆円を超え、世界全体で2万2000名以上の従業員を有するなか、グローバルで様々なユーザーに寄り添っていく。
2023年05月29日