SABICが新製品発表 ULTEM 2X20 グレード

2023年06月13日

ゴムタイムス社

 SABICは5月25日、高耐熱性ULTEM(ウルテム)樹脂の新製品として、低粘度で高流動性を特徴とする「ULTEM 2X20 グレード」を発表した。その他、ポートフォリオも拡充した。
 新たに追加した「ULTEM 2120」「同2220」「同2320」製品はガラス繊維を充填した強化グレードであり、高流動性および高強度を発揮するほか、カスタムカラーに着色が可能となる。
 この新しいガラス繊維強化グレードは、複雑形状の小型部品を高精度で製造できるため、光ファイバーや電気コネクターなどの薄肉部品に最適な成形素材となる。また、同材料は高い流動性を備えることから、ショートショットを回避しながら、射出圧力を下げる、もしくは従来と同じ射出圧力でより薄肉の部品を成形可能などの柔軟性を提供することができる。
 この新しいグレードは、既存のULTEM 2X10/2X00樹脂のカラーレンジを維持するとともに、コネクター識別や製品ブランディングに向けてカスタムカラーでの着色も可能となる。さらに、ULTEM 2X20グレードは、競合のポリスルホン材料と比べて機械的強度が高いことから、より耐久性および信頼性に優れた部品の製造が可能となる。
 新しいウルテム樹脂は、持続可能性の向上に向けて、ISCC PLUS認定を取得した再生可能材料も利用可能となる。
 また、これらの新グレードは、SABICの製造過程において過フッ素化およびポリフッ素化物質(PFAS)を意図的に添加されることはなく、意図しないPFAS不純物を含有することもないと想定している。
 SABICでULTEM Americasのシニアビジネスマネージャーを務めるPaul Nugentは、「コネクターをはじめとして非常に小さく複雑形状の部品に対する要件は進化を続けている。私たちはこうした要件を満たすために、この新しいウルテム樹脂を開発した。この新しいグレードは、デザインや外観に対する設計自由度の向上、加工の柔軟性とコスト効率の向上、および高い信頼性を備えた性能、というお客様のニーズに応える。また、これらの高機能性樹脂は、光ファイバー通信から家庭用電化製品に至るまで、複数の業界にわたって付加価値を提供するとともに、接続性やデータ管理などの分野における急速な技術進歩に対応する」と話す。
 ULTEM2120、2220、2320樹脂は、それぞれ10%、20%、30%のガラス繊維を配合しながら低粘度を維持しているため、薄肉でコンパクトな部品設計が可能であり、部品内部や搭載スペースの拡張に寄与する。この新しい材料は、流動性を高めた従来のウルテム樹脂と比べてスパイラルフロー性能が最大36%向上している。
 高流動性によって成形時間の短縮および生産コスト削減も可能となる。このウルテム樹脂は射出圧力を最大35%低減できるため、成形装置の制約を克服することができる。
 また、流動性の向上によって成形温度を下げることもでき、エネルギーコストの削減に加え、冷却時間を最大10%短縮できることで、スループットの向上が実現できる。さらに、樹脂の早期固化(フリーズオフ)や外観不良といった問題の軽減にも寄与する。
 ULTEM 2X20 樹脂はカスタムカラーでの着色が可能なため、光ファイバーや電気コネクターの種類や速度の識別、コンポーネントの外観向上、ブランドアイデンティティーの強化などが可能となる。SABICのColorXpressサービスを利用することで、色と効果を正確にマッチングさせることができる。
 このサービスは数千色のライブラリを提供しており、オンラインでの検索も可能となる。
 SABICの高耐熱性材料に加わった新たな製品非晶性ポリエーテルイミド(PEI)材料である他のウルテム樹脂と同様、高流動性とカスタムカラーでの着色性を備えた新しいグレードは、複数の高性能な特性をバランス良く発揮する。
 同グレードは、長期にわたる高耐熱性、固有の難燃性、化学的安定性、寸法安定性、加水分解安定性を兼ね備えている。SABICの高耐熱性材料のポートフォリオには、ウルテム、EXTEM、SILTEM樹脂がラインアップされている。

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