レゾナックは6月12日、産業向け自動化ソリューション事業を手掛けるAMI Automation(AMI)の株式を100%取得することを決定したと発表した。
同社は、2021年2月5日にAMIの50%の株式を取得しており、その後5年以内に残りの50%の株式を取得するオプションを保有していた。今回は、同社子会社を通じて残り50%の株式を追加取得し、100%取得を完了する。同手続きの完了は2023年第3四半期を予定している。
AMIは、ハードウェア・ソフトウェア・サービスを通じて自動化ソリューション事業を幅広い産業にグローバルに展開している。
特に鉄鋼業界で使用する電気製鋼炉(電炉)向けの運転最適化ソフトウェアが、今後も市場成長が大きく見込まれる北米において生産量ベースで約90%の電炉鋼生産に活用するなど、世界的なイノベーションリーダーとして認知されている。
一方、同社は、グラファイト事業において世界6拠点に生産設備を有し、世界トップの生産能力を持ったグローバルリーダーとして、高品質な黒鉛電極を展開している。
今回のAMIの株式100%取得によって、同社のグラファイト事業は、黒鉛電極という「モノ」の提供から製造現場のデジタル化を支援する「サービス」を提供する事業モデルへ進化させる。すでに、AMIの電炉運転最適化ソリューションにより、ユーザーの電炉運転の高効率化、安全性の向上、省エネルギー、温暖化ガス排出量削減といった大きな付加価値の提供を開始している
AMIには、約20名のAIエンジニアを含む、約200人のDX関連エンジニアが所属している。
上記の電炉向けソリューション提供のみならず、今後は彼らが、同社のDXの強みの源となる計算科学・情報科学を扱う計算情報科学研究センターや、DX活動を推進するCDO組織と連携し、同社グループ全体のDX化を加速していく。
くわえて、電炉向けの運転最適化システムの提供にとどまらず、AMIは製紙、セメント、石油等など、さまざまな幅広い産業向けに生産自動化・制御ソリューションを提供しており、今後は製造現場の支援についても共同プロジェクトを進める。
AMI Automationの設立は1987年、本社所在地は、メキシコ ヌエボ・レオン州モンテレイ、主な事業内容として、Meltshop Solutions事業では、電炉向けの運転最適化システムと黒鉛電極の制御システム、Industrial Systems事業では、各種産業向けの生産自動化・制御ソリューションを行っている。従業員数は、約260人(2023年5月現在)となる。
同社グループは、半導体・電子材料、モビリティ、イノベーション材料、ケミカル等を展開し、川中から川下まで幅広い素材・先端材料テクノロジーを持つ化学会社。2023年1月に昭和電工グループと昭和電工マテリアルズグループ(旧日立化成グループ)が統合し、新たなスタートを切った。
新社名の「Resonac」は、英語の「RESONATE、共鳴する・響き渡る」と、Chemistry の「C」を組み合せて生まれた。同社は「共創型化学会社」として、共創を通じて持続的な成長と企業価値の向上を目指している。
2022年度の売上高は約1兆4千億円、うち海外売上高が56%を占め、世界22の国や地域にある製造・販売拠点でグローバルに事業を展開している。
同社グループのグラファイト事業では、金属スクラップを溶解し鉄鋼を生産する電炉の電極として使用している黒鉛電極を生産・販売している。鉄鉱石から鉄鋼を生産する高炉に比べて、電炉は約1/4のCO2排出量で鉄鋼を生産できるため、世界全体で高炉から電炉への置き換えが進んでいる。
2028年には、年間5~7万トンの新たな黒鉛電極の需要が見込まれる。特に、電炉の割合が7割を占める米国での電炉新設計画が増加。同社が得意とする28インチ(700mm)以上の大口径電極の需要が今後ますます伸びることが期待されている。
2023年06月13日