UBE、共同開発の化合物 米国の希少疾病用医薬品指定取得

2023年06月28日

ゴムタイムス社

 UBEとHiLungは6月27日、共同開発を行っているリゾホスファチジン酸受容体1(LPA1)選択的アンタゴニスト(開発コード、HL001、「同化合物」)について、米国FDA(医薬食品庁)より希少疾病用医薬品指定(OrphanDrug Designation、「ODD」)を取得したと発表した。
 同化合物は、本邦でも指定難病に含まれる特発性肺線維症(IPF)への適応をめざし、AMED((研発)日本医療研究開発機構)の支援(創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業)をいただき開発を進めている新規医薬品候補となる。
 IPFは一般に慢性進行性で肺の線維化と肺活量の低下を来し、平均的には診断後5年程度で半数の患者が死に至るとされ、肺機能を回復させる治療法が肺移植しかないアンメットニーズの高い疾患。
 米国でも本邦同様に希少難治性疾患の位置づけとなるこのIPFへの開発に際し、今般 ODDを同化合物に関して取得した。
 ODD取得に際して必要となる有効性の蓋然性の根拠には、HiLungが独自に開発したヒト外挿性の高い肺オルガノイド線維化伸縮アッセイでの評価結果も含んでおり、臨床データ(ヒトでの治験データ)がない時点での指定に至った。
 これにより、米国新薬承認申請時の申請費用の免除、臨床開発に係る連邦税の減免など、FDAからの各種薬事・研究費支援などの開発優遇・促進策が米国にて活用可能となるとともに、承認後には米国における7年間の排他的先発販売権が与えられ、希少疾患における医薬品開発を加速する上で重要となる、多国間での多施設臨床試験に向けて、大きな一歩となる。
 両社は2021年3月に共同研究契約、2022年3月に共同開発契約を締結し、UBEが有する有機合成力に支えられた創薬・合成技術と、HiLungが有するヒトiPS細胞由来呼吸器細胞モデルを含む呼吸器領域における知見とを活かし、同化合物の開発を続けてきた。
 慢性疾患であるがゆえの日常的な使用が容易となるよう、患者の目線に立った開発を続けており、今般の米国ODDもそうした患者ニーズに応え得る候補品たる位置づけの証左として、臨床試験そして上市に向けた取り組みを加速していく。
 今回の米国ODD取得により、両社はより一層強い協力体制を築き、それぞれの強みを活かして同化合物の開発・グローバル導出を加速し、一日でも早く患者にお届けできるよう努めていく。
 UBEの医薬事業は、スペシャリティ化学を志向するUBEグループにおいて、ライフサイエンス分野の中核事業となるべく、創薬研究事業においては従来の低分子医薬品の他、ADC(抗体薬物複合体)などの高付加価値創薬に挑戦している。
 また、CDMO事業では既存の低分子医薬品分野を拡充すると共に、核酸医薬品等の新規モダリティの製造技術獲得などを通じて、人々の生命・健康を守る手段を提供していく。
 HiLungは、ヒトiPS細胞を用いた肺細胞の分化誘導・加工をコア技術として、呼吸器疾患に対する進歩的な治療の開発を加速させるために創設した。
 ヒトiPS細胞技術に基づき作成したヒト生体再現性が極めて高いヒト正常呼吸器モデル、およびヒト呼吸器疾患や呼吸器感染症モデル、さらにはAIやデバイスによる解析技術を組み合わせることで、動物実験では代替できないヒトでの安全性や有効性が期待できる治療薬候補を予測・選別する大規模プラットフォームを提供していく。
 このような基盤技術を通して、新たな医薬品や治療法の開発を加速させることで、呼吸器疾患が治り「誰もが気持ちよく呼吸できる未来」の実現に向けて事業を展開している。

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