帝人は6月29日、三島事業所で生産する炭素繊維「テナックス」ならびにその材料であるポリアクリロニトリル(PAN)について、持続可能な製品の国際認証のひとつであるISCC PLUS認証を取得したと発表した。
炭素繊維とその材料であるPANが合わせて同認証を取得するのは、世界初となる。
炭素繊維は、低燃費化への寄与が期待される「軽くて強い」素材として幅広い用途で使用されているが、近年、ライフサイクル全体を通じた温室効果ガス(GHG)の排出量削減へのニーズが高まりを受け、製造工程における環境負荷が課題とされている。
こうした中、同社は、製造拠点における自家発電設備の燃料を天然ガスに切り替えた他、「テナックス」のフィラメントや中間材料の製造工程で発生するCO2の排出量を算出し、ライフサイクル全体でのLCA(ライフサイクルアセスメント)を評価の上で関連情報を開示するなど、環境負荷低減に向けた取り組みを進めてきた。
これに加え、環境配慮型原料の使用によって、製造工程におけるGH排出量をさらに低減すべく、環境配慮型原料を用いた「テナックス」の市場展開に向け、国際認証の取得に向けた準備を進めていた。
同社がISCC PLUS認証を取得した、三島事業所で生産するPANならびに「テナックス」は、バイオマス由来製品の廃棄物や残留物を用いたアクリロニトリル(AN)または循環型の原料を用いたANを使用し、同認証に基づいたマスバランス方式で生産するもの。
原料であるANが従来の石油由来のANと同等の物性であることから、これを用いて生産するPANや「テナックス」は石油由来品と同等の物性を有す。
そのため、従来品から容易に切り替えることができ、製品のライフサイクル全体におけるGHG排出量の削減に貢献することを期待する。
認証取得を受け、同社は、2024年前半までに、石油由来の原料を用いた従来品に加え、同認証に基づいたマスバランス方式でのPANならびに「テナックス」の生産・販売開始を目指し、準備を進めて行く。
また、環境配慮型の製品の展開を強化すべく、欧米、アジアで生産している炭素繊維およびその関連製品においてもISCC PLUS認証に向けた検討を進める。
2023年06月30日