東ソーと日本カーリット、理化学研究所は7月10日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/水素利用等高度化先端技術開発」の公募に対し、「水電解用酸化マンガン系酸素生成(OER)触媒の運転方法・製造方法の確立と大型化へ向けた研究開発」を共同で提案し、このほど採択されたと発表した。
同事業の委託期間は2023年8月から2025年3月までを予定している。
同研究開発は、脱炭素社会のエネルギー源として注目されている「グリーン水素」の製造に用いる新規触媒(イリジウム含有マンガン酸化物)に関するものとなる。
イリジウム含有マンガン酸化物の工業化可能な製造方法、水電解の最適な運転方法、また電解装置の大型化に向けた技術開発を行い、事業化に必要な技術基盤を構築する。
グリーン水素は今後の需要増が予想されるが、触媒として用いているイリジウムが希少金属のため、その資源量不足が懸念されていた。イリジウム含有マンガン酸化物は少量のイリジウムでも高い触媒活性を示すことから、イリジウム資源問題の解決策になると期待される。
役割分担として、東ソーは、イリジウム含有マンガン酸化物の製造方法、日本カーリットは、電解装置(セル)の設計・試作・評価、理化学研究所は、触媒の評価・解析を行う。
イリジウム含有マンガン酸化物は、水電解を効率的に進行させるため開発した新規触。先行して行ったNEDO「水素利用等先導研究開発事業/水電解水素製造技術高度化のための基盤技術研究開発/非貴金属触媒を利用した固体高分子型水電解の変動電源に対する劣化解析と安全性向上の研究開発」(受託は理化学研究所、再委託は東ソー、日本カーリット、ブラザー工業)において見出された。
比較的安価なマンガン酸化物と、少量のイリジウムを高度に複合化させることにより、従来のイリジウム触媒よりも安価で高活性・高耐久性となる特徴がある。
安価な水を電気分解して水素と酸素を得ることを「水電解」と呼ぶ。水素は燃料電池車の燃料に代表されるように、次世代のエネルギー源として期待されている。
また、水素の中でも再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電など)を用いた電気分解によって得られた水素は「グリーン水素」と呼ばれている。電気分解を行う際にCO2を副産物として生み出すことなく水素を製造することができるため、カーボンニュートラル社会を実現するための重要な手段として、多くの研究開発が進められている。
2023年07月11日