住友化学と米国ギンコバイオワークスは7月18日、バイオものづくりの連携を強化し、合成生物学を用いた機能化学品の開発に着手することにしたと発表した。
近年、バイオテクノロジーやデジタル技術の急速な発展により、遺伝子を設計し、目的の機能を有する細胞や生物を作り出す合成生物学がさまざまな分野で注目を集めている。
特に、化学産業においては、化石資源を原料とした高温・高圧のプロセスからの脱却として、原料の代替や省エネプロセスを実現する潜在能力がある技術分野と期待されている。
ギンコバイオワークスは、2008年にボストンで創業した細胞・ゲノムの研究開発領域で変革を起こす合成生物学のパイオニア企業。住友化学とギンコバイオワークスは、21年より化粧品などのパーソナルケア商品や農業および医薬関連製品といったライフサイエンス領域で、合成生物学を用いた研究開発を行ってきた。
今回、機能化学品の量産化に向けたプロジェクトに着手するため、新たに共同研究契約を締結した。
今回の取り組みで、ギンコバイオワークスは、菌株設計の技術を生かし、商業化に必要な菌株開発を担い、住友化学は、製造プロセスの開発およびそのスケールアップによる商業化に向けた検討を行う。
両社は、化石資源を原料とした製造方法に代わって、微生物の発酵生産によって機能化学品を量産化することで、よりカーボンフットプリントの低い製品を提供し、カーボンニュートラル社会の実現への貢献を目指す。
住友化学の副社長である上田博氏は、「化学品の分野では、環境負荷が低い製品および製法の開発が求められており、合成生物学を活用することで、化石資源からの原料代替と量産化が可能性になるものと考えている。合成生物学のパートナーとしてギンコバイオワークスとの連携を強化することで、化学産業でのゲームチェンジャーとなり得る革新的な技術の開発を加速していく。」と語っている。
ギンコバイオワークスのCEO兼共同設立者であるジェイソン・ケリー氏は、「住友化学はギンコバイオワークスの大切な長期的パートナーであり、私たちは、複数の産業分野にバイオ技術を用いた製品を導入するため、これまで共同開発を進めてきた。このたびの両社の連携強化を通じて、取り組みの領域を拡大し、より持続可能な製品を生み出すことを目指している。また、私たちは、住友化学とのユニークなコラボレーションによる成果を誇りに思っており、両社にとって興味深い製品をさらに開発中である。」と語っている。
住友化学は、エッセンシャルケミカルズ、エネルギー・機能材料、情報電子化学、健康・農業関連事業、医薬品の5部門にわたり、幅広い産業や人々の暮らしを支える製品をグローバルに供給する日本の総合化学メーカー。2022年度の売上高は約2・9兆円、従業員数は約3万3500人となる。
ギンコバイオワークスは、欧米に研究拠点を有し、世界最大規模のゲノム開発事業を展開している。合成生物学を応用し、食品や農業から工業用化学品、医薬品まで、さまざまな業界のユーザーに製品を提供している。
2023年07月19日