樹脂の成分率短時間で分析 東レリサーチ、受託サービス開始

2023年07月21日

ゴムタイムス社

 東レリサーチセンターは7月20日、樹脂中のポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP) の成分比率を高速カロリメトリー(Fast Scanning Calorimetry、(FSC))を 用いた短時間で高精度に決定する分析技術を開発し、受託サービスを開始したと発表した。
 PEやPP、さらにそれらのブレンド樹脂は多くの産業資材や民生品に使われている。
 製品内でPEとPPが仕込み組成通りに均一に混ざっていることの確認、マテリアルリサイ クルにおけるリサイクル原料を用いた再生品の成形加工性、品質安定性を確保するために、 樹脂中のPE/PPの成分比率を正確に把握する必要がある。
 同技術により、成分比率の不明な樹脂を1時間程度の簡単な分析操作かつ1%の高い精度で調べることが可能になり、原料の受入検査や製品検査にかかる手間を大幅に短縮することが期待される。
 PEおよびPPは世界で最も多く使用している樹脂となる(2019年は世界の樹脂の総使用量の約40%にあたる1・8億トンが使用)。
 それらの用途は産業および民生用の繊維、フィルム、成形体など多岐に亘るが、例えば自動車部材に使われる成形体では強度や耐久性などを調整するためにPEとPPが混合された樹脂も使用されている。
 これらの樹脂を繰り返し利用するためのマテリアルリサイクルでは、工場から排出した工程屑や市場品を回収し、再ペレット化したものをリサイクル原料として利用する。
 ただし、製品内でPEとPPが仕込み組成通りに均一に混ざっていることの確認、リサイクル原料を用いた再生品の成形加工性、品質安定性を確保するために、樹脂中のPE/PP の成分比率を正確に把握する必要がある。 樹脂中のPE/PPの成分比率を決定する手法としては、核磁気共鳴(NMR)法が一般的に用いられる。
 NMR法では高精度で比率決定が可能という長所があるが、 高温の有機溶剤を用いた前処理が必要となること、さらに、結果が得られるまでに6時間程度を要し、数多くの試料を分析できないなどの短所があるため、簡便で高精度かつ環境に優しい代替手法の開発が期待されていた。この課題に対して、同社はFSCを活用した解決法を考案した。
 同社は毎秒数千℃の超高速で試料を加熱・冷却できる熱量計(高速カロリメーター)を産業界に先駆けて導入し、10年以上に亘って分析技術開発を続けてきた。
 このたび、長年培った高分子の構造解析技術を発展させて、PE/PPブレンド樹脂中の各樹脂の成分比率を簡便で高精度に決定し、かつ環境に優しい新規解析法を開発した。
 通常、PE/PPブレンド樹脂中では、PEとPPがそれぞれ結晶と非晶質の構造を形成している。従来の熱分析では、このような複雑な構造に由来する複数の信号が重なって検出され、成分毎の信号に分けて解析することが出来なかった。
 この度、高速カロリメーター内で、一旦融点以上に昇温して融解させた試料を、測定前に急冷することで、PPを選択的に非晶質化すればPPの非晶質に由来する明瞭な信号を検出できることを見出し、同技術を開発するに至った。
 同技術は既存のNMR法と同等の精度を有しながら、環境への負荷が大きい有機溶剤を用いずに、かつ煩雑な操作を必要としない、簡便で環境に優しい分析技術であり、PEとPP の含有率が未知のリサイクル原料への適用が期待される。
 

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