旭化成は7月27日、独自開発したリチウムプレドープ技術を基にしたリチウムイオンキャパシタ(LiC)の設計および製造技術のライセンス活動を本格的に開始したと発表した。
独自の新ドープ法によりリチウムイオン電池(LiB)と同様の汎用部材および汎用設備で安価にLiCを製造できるようになり、さらに高容量で入出力特性が向上したLiCの設計・製造技術を実現している。
同ライセンスには、同社のLiC技術に関わる知的財産だけでなく、設計やパイロット設備での製造技術といった技術ノウハウが含まれている。
同技術のライセンスを通じ、国内外のユーザーにおけるLiCの開発期間の大幅な短縮や、現行設備を利用した安価なLiCの製造を支援する。
蓄電池は、電動モビリティの普及や再生可能エネルギーの活用が進むことで、今後ますます需要が高まっていくことが予想される。
蓄電池の一つであるLiCは、正極に電気二重層キャパシタ(EDLC)と同じ材料を、負極にはLiBと同じ材料を使用した次世代の蓄電デバイスとなる。
LiCは、LiBに比べ入出力特性が高いことから瞬間的なパワーが必要な用途に向き、高速での充電が可能。また、長いサイクル寿命や高い安全性といった特長も持っており、今後は停車駅ごとに充電を行う架線レスの路面電車やバスなどのモビリティ用途での展開が期待される。
また、近年需要が高まっている太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを利用したエネルギー貯蔵システム(ESS)などにおいては、LiBとLiCを併用することで、LiBにおける充放電の負荷を減らすことができ、LiBの寿命を延ばすことが可能となる。
その結果、システムの主要部材であるLiBの交換頻度や廃棄物の発生を減らすことができ、ランニングコストと環境負荷の両方を低減することが期待されている。
しかし従来のLiCでは、製造工程で必要となるリチウムのプレドープ工程において、「穿孔(せんこう)箔」や「金属リチウム箔」など高コストの部材が必要だった。また、水に触れると発火の危険性がある金属リチウム箔を安全に取り扱うための製造環境も必要で、コストと製造工程の両方において課題があった。
同社は穿孔箔や金属リチウム箔など特定の部材を使用することなく、安価な「炭酸リチウム」をリチウムイオン供給源として用いることで、負極材料にリチウムをプレドープする独自技術(新ドープ法)の開発に成功した。
新ドープ法は、正極に炭酸リチウムを含有させ、この炭酸リチウムを初回充電時にほぼ 100%分解することによりプレドープを行う技術で、LiBと同様の部材、類似の設備で製造できる上、従来のLiCよりも容量と入出力特性がそれぞれ1・3倍以上(同社従来品との比較)向上していることが特長となる。
なお、同社はこれまでに同技術に関してライセンス活動を進めており、既に採用実績がある。
同社は、今後も同技術ライセンスの取り組みを通して、次世代蓄電デバイスであるLiCの新規採用や用途展開を支援し、持続可能な社会の実現に貢献していく。
2023年07月28日