帝人、東急建設と共同検証 水素燃料電池発電機の有効性

2023年08月09日

ゴムタイムス社

 帝人は8月9日、東急建設と共同で建設工事現場における電源として活用する水素燃料電池発電機の有効性と有用性に関する検証を行ったと発表した。
 夜間工事の現場では、照明や警告板などの電気設備の利用のために電源が必要となるが、通電していないケースが多く、一般的に軽油やガソリンを使用する発電機が用いられている。
 しかし、軽油・ガソリン発電機はCO2の排出をはじめ、騒音、振動、臭気などの問題があり、周辺環境に支障をきたすため、その改善が課題となっている。
 こうした課題の解決に向けて、水素燃料電池(燃料電池)の活用が注目をされている。発電機に燃料電池を使用した場合、従来の発電機と比べて臭気が無く、騒音の低減も見込める。また、燃料電池はCO2などの温室効果ガスを排出せず、脱炭素社会の実現に貢献する。
 両社は、建設工事現場への水素エネルギーの普及を目指し、東急建設が施工中の渋谷駅周辺開発に伴う建設工事現場において、帝人グループが開発した水素燃料電池発電機である燃料電池ユニットと同ユニットに水素を供給する圧力容器ユニットを用いて、電気設備機器の電源としての水素燃料電池発電機の有効性と有用性を検証した。なお、今回の検証では東急建設の技術研究所で生産した「グリーン水素」を使用した。
 検証の実施期間は2023年6月下旬~2023年7月中旬、実施場所は、渋谷駅西口地下タクシープール車路整備工事(東京都渋谷区/工事発注者は東急)、使用装置は、燃料電池ユニットおよび圧力容器ユニット(いずれもコンセプトモデル)、使用用途は、夜間工事に必要な照明や警告板などの電気設備の電源利用のために使用、検証内容は、水素燃料電池発電機の使用による建設工事現場でのCO2削減効果および騒音低減効果と、燃料電池ユニットと圧力容器ユニットの作業性と運搬性となる。
 検証の結果、水素燃料電池発電機の使用による建設工事現場でのCO2削減効果および騒音低減効果では、検証期間中に水素燃料電池発電機を累計約10時間使用した結果、同出力のガソリン発電機と比較して、CO2排出量の削減効果を約6キロ(参考値)と確認した。これにより、水素燃料電池発電機の使用で年間約1t強のCO2排出量の削減効果が見込めることを確認した(帝人調べ)。その他、運転音について、ガソリン発電機は約80デシベルだったが、同出力の水素燃料電池発電機は約60デシベルとなり騒音低減を実現した(東急建設調べ)。
 その他、燃料電池ユニットと圧力容器ユニットの作業性と運搬性では、東急建設の技術研究所から渋谷の工事詰所や資材置場まで燃料電池ユニットと圧力容器ユニットを搬入する工程において、各ユニットの車両への積み込みや積み下ろし作業を行ったが、特殊な機材は必要とせず、人の手による作業が可能であることを確認した。
 工事詰所と資材置場から工事区画内にある使用場所までの片道約300mにおいて、燃料電池ユニットおよび圧力容器ユニットを作業者1名ずつで運搬できることを確認した。
 水素燃料電池発電機を使用した作業所は、「工事現場における可搬性に優れ、安全に運搬できることを体感した。また、通常使用するガソリン発電機と比べても音が非常に静かなので、住宅地での工事などで活用できると思う。工事現場でも環境対応が求められている中で、水素エネルギーの可能性を感じた。」とコメントしている。
 今後、両社は燃料電池ユニットと圧力容器ユニットについて寒冷環境下での使用が可能かどうかの検証を行う予定となる。
 東急建設は、CO2排出量削減など環境負荷低減と周辺環境へ配慮した工事を進めていくため、建設工事現場における水素燃料電池発電機の実装に向けた取り組みを進めていく。
 帝人は、東急建設と進める検証結果などを踏まえて、燃料電池ユニットと圧力容器ユニットを建設業界をはじめとするさまざまな業界に向けて、2024年春頃より販売開始することを目指す。

水素燃料電池発電機を運搬する様子

水素燃料電池発電機を運搬する様子

水素燃料電池発電機による照明利用の様子

水素燃料電池発電機による照明利用の様子

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