DICが藍藻類の 生育環境保全と食文化継承支援

2023年08月29日

ゴムタイムス社

 DICは8月28日、グループ会社でスイゼンジノリ由来多糖類「サクラン」の製造販売を行うグリーンサイエンス・マテリアル(GSM社)と、絶滅危惧種の藍藻類であるスイゼンジノリの生育環境保全と食文化継承のための支援を開始したと発表した。
 スイゼンジノリは、九州にある阿蘇山系の清澄な湧水にのみ生息する日本固有の藍藻類で、福岡県の黄金川や熊本県の江津湖で収穫されてきた。江戸時代には高級食材として幕府に献上され、福岡県の秋月藩や熊本県の細川藩の財政を支えるなど、地域の伝統食材として親しまれている。
 しかし、近年は気候変動などによる阿蘇山系の水環境の変化が影響し、その収穫量は年々減少傾向にあり、現在絶滅危惧種に指定されている。そのため、地域の方や水前寺のりくまもとの会、江津湖研究会を中心に水環境の保全活動が行われている。
 スイゼンジノリから抽出する多糖類「サクラン」は、高い保湿性、抗炎症効果、バリヤ性などの機能を持ち、化粧品やヘルスケア分野で有用な成分であることから、同社とGSM社はスイゼンジノリの屋内での大量培養技術確立に取り組み、2022年8月に世界で初めて成功し、量産化の段階まで進展させた。
 同社は経営理念に掲げる顧客と社会の持続可能な発展に貢献するため、スイゼンジノリの商業的な生産だけに留まらず、GSM社が九州で育んできた地域社会およびアカデミアとの連携をベースに、スイゼンジノリをとりまく自然環境の保護や地域の伝統文化の継承に貢献していく。
 今年は、すでに黄金川の清掃や水前寺のり料理コンテストへの支援などを開始し、今後も、スイゼンジノリ発生地である江津湖や天然養殖されている黄金川での環境保全活動や、江津湖研究会や水前寺のりくまもとの会などが継続して行っている地域貢献活動を積極的に支援していく。
 これらの活動を通じ、「サクラン」をグローバルに提供するだけでなく、地域の歴史・伝統文化としても価値のあるスイゼンジノリの魅力を世界に向けて発信し、さらに「生物多様性の維持」や「歴史・伝統文化の継承」の大切さを幅広い世代へ伝えていく。
 同社グループは、長期経営計画「DIC Vision 2030」で掲げた「Quality of Life(QOL)」社会への貢献を実現すべく、「ヘルスケア領域」を重点事業領域の1つに定めている。
 今後も「藻類屋内培養技術を活用したパーソナルケア事業」と「スイゼンジノリの生育環境保全や歴史・伝統文化の継承のための支援」を両立し、事業を拡大していく所存としている。

スイゼンジノリが天然養殖されている福岡県朝倉市の黄金川の環境保全活動

スイゼンジノリが天然養殖されている福岡県朝倉市の黄金川の環境保全活動

「水前寺のりくまもとの会」への活動支援、左からジーエスエム社田中社長、日本料理おく村 奥村代表取締役、ディーアイシー髙野常務執行役員、水前寺のりくまもとの会椛田会長、ジーエスエム社金子副社長

「水前寺のりくまもとの会」への活動支援、左からジーエスエム社田中社長、日本料理おく村 奥村代表取締役、ディーアイシー髙野常務執行役員、水前寺のりくまもとの会椛田会長、ジーエスエム社金子副社長

水前寺のり料理コンテストへの支援(食の伝統文化継承に関わる活動。今年は熊本県立第一高等学校にディーアイシー賞を授与)

水前寺のり料理コンテストへの支援(食の伝統文化継承に関わる活動。今年は熊本県立第一高等学校にディーアイシー賞を授与)

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