SABIC、電子部品向け ガラス繊維強化のコンパウンド上市 

2023年09月01日

ゴムタイムス社

 SABICは8月31日、レーザーによる直接配線形成技術(LDS)を用いてアンテナが組み込まれる家電製品および電子部品のハウジングやカバーの成形に適した新しい LNP THERMOCOMP WF006V コンパウンドを発表した。
 この新材料は形状の複雑な小型部品の設計を実現するとともに、生産の迅速化やシステムコストの削減が可能なことから、フレキシブルプリント回路(FPC)アンテナなど既存の選択肢に代えてLDSアンテナの導入を促進するものとなる。
 LNP THERMOCOMP WF600V はガラス繊維で強化したコンパウンド材料であり、無充填のポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂やポリカーボネート(PC)樹脂と比べ2倍以上の引張弾性率を有し、小型・薄肉部品の成形に適している。また、優れた表面品質による美しい外観が実現でき、加えて、優れた信号利得とLD 性能を提供する。
 この LNP THERMOCOMP WF600V コンパウンドは、従来の材料と比べて耐薬品性と加水分解安定性に優れ、反りが少ないといった特徴を備えている。
 同社のスペシャリティー事業部でLNP&NORYLビジネス・マネジメント・ディレクターを務めるJoshuaChiaw氏は、「アンテナは、スマートフォン、スマート家電、GPS端末など無線接続を伴うアプリケーションに不可欠なコンポーネント。LDSは、これらのアンテナを実現する重要な技術。SABICの新しいLNP THERMOCOMPは、LDS一体型アンテナの設計、生産サイクルタイムや外観の最適化に役立つことから、多くのアプリケーションで採用が広がっている。このたび発表した新しいコンパウンドは進化を続けるコネクテッドデバイスの要件に対応し、対象を絞って新たなソリューションを提供するというSABICの継続的な取り組みを示すもの」と話している。
 LDSプロセスは、特殊な添加剤を用いたポリマーで成形した部品の3次元表面に、アンテナ設計を直接転写することが可能な技術。転写したアンテナは、レーザーによるパターンの活性化および化学めっきが施された後、回路に接続する。
 この技術によって、複数部品の統合、スペース要件の最小化、試作の簡素化、費用対効果の高い大量生産を実現することができる。
 LNP THERMOCOMP WF600V コンパウンドは現行材料の課題を解決するとともに、歩留まり損失やリワーク、後の工程で発生する追加コストを回避することができる。
 一部のガラス繊維強化材料は無電解めっき工程で使用する化学薬品によって侵食されるため、繊維が部品の外側に移動し表面仕上げに影響を与えることがある。また他材料の場合、異方性による反りの発生が懸念されるほか、一部の樹脂は過度の吸湿によって誘電安定性が低下するという課題も指摘されている。
 このコンパウンド材料は、優れた耐薬品性、低反り性、低吸湿性を発揮することで、これらすべての問題を克服する。さらに、この材料は耐衝撃性とレーザー溶接性にも優れている。

コンパウンドの用途例

コンパウンドの用途例

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