レゾナックにIPEF視察団 ケミカルリサイクル事業

2023年09月04日

ゴムタイムス社

 レゾナックは8月31日、インド太平洋経済枠組み(IPEF)に加盟する14ヵ国45名の視察団を、神奈川県川崎市の同社川崎事業所の「プラスチックケミカルリサイクル事業」(KPR)で受け入れたと発表した。
 KPRは、使用済みプラスチックを水素やアンモニアなどの化学品原料にリサイクルしており、使用済みプラスチックのガス化ケミカルリサイクルを長期商用運転している世界で唯一のプラントとなる。
 本年5月に米国・デトロイトで開催されたIPEFの閣僚会合では、脱炭素燃料として注目される水素について、「水素イニシアティブ」が日本とシンガポール主導で立ち上げられた。同イニシアティブは水素エネルギーにおけるサプライチェーン構築を目的としている。
 それを受け、IPEFメンバー国の交渉担当者や関係省庁担当者、民間のステークホルダー向けに、デジタル貿易とクリーン経済について、官民セクターの現状と課題を理解いただく「IPEF協力プログラム~IPEFジャパンウィーク~」が、8月28日~31日に開催された。このIPEF協力プログラムにおいて、同社KPRに受け入れの要請があり、このたび視察が実現した。
 日本国内において使用済みプラスチックの多くが埋め立てられたり燃やされたりしているなか、KPRは使用済みプラスチックの資源循環に20年間貢献してきた。
 世界では回収したプラスチックごみの79%が埋め立てあるいは海洋等へ投棄されており、プラスチックのリサイクル率は世界で9%ですが、日本では24・8%に上る。
 KPRでは家庭や企業からゴミとして排出する使用済みプラスチックから化学の力で水素やアンモニアを製造しており、「水素イニシアティブ」のように国際的に水素活用の協力や支援が推進されているクリーン経済分野で貢献できる。
 基礎化学品事業部の原聡事業部長は、「当社は 20年間このプラスチックケミカルリサイクル事業を続けてきて、既に100万tを超える使用済みプラスチックを有用な化学品などに再生し、資源の再利用・資源循環社会の構築に貢献して来た。このたび、IPEF加盟国からの視察団をお迎えし、同じ目標を持っている方たちとのネットワークが広がった。「化学の力で社会を変える」という当社の「パーパス」を具現化するために、この事業を一層強化していきたいと思う。」とコメントしている。
 KPRは2003年にアンモニア原料となる水素を生産する目的でガス化ケミカルプラントとして誕生した。ガス化ケミカルリサイクルを20年近く長期にわたって安定運転しているのは、KPRが世界で唯一のプラントとなる。KPRでは使用済みプラスチックを原料に、高温でガス化し分子レベルまで分解して水素とCO2を取り出している(ガス化ケミカルリサイクル)。
 運転中に化石燃料をまったく使わないため、熱交換率は100%となる。ここで取り出した水素の一部は近隣プラントにて化学原料向けや水素ステーションにて燃料自動車向けに活用し、そのほかは主にアンモニアの原料になり合成繊維、合成樹脂、化学肥料、薬品などに使われる。一方のCO2は大気中に放出することなくグループ会社でドライアイスや炭酸飲料、医療用炭酸ガス向けの原料に使用するなど、資源循環を実現し持続可能な豊かな社会実現に向け活躍している。
 IPEFは、世界人口の半分以上を占め、世界の経済活動の中核であるインド太平洋地域では、包括的かつ持続可能な経済成長を目指し、2022年5月にインド太平洋経済枠組み(IPEF)が設立された。IPEFは、加盟国が平等に利益を享受できる世界的なルールと構造を形成するための議論を主導することが期待されている。
 加盟国は、米国、日本、オーストラリア、ブルネイ、フィジー、インド、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、韓国、シンガポール、タイ、ベトナムの14ヵ国。
 同社グループは、半導体・電子材料、モビリティ、イノベーション材料、ケミカル等を展開し、川中から川下まで幅広い素材・先端材料テクノロジーを持つ化学会社。2023年1月に昭和電工グループと昭和電工マテリアルズグループ(旧日立化成グループ)が統合し、新たなスタートを切った。
 新社名の「Resonac」は、英語の「RESONATE、共鳴する・響き渡る」と、Chemistry の「C」を組み合せて生まれた。同社は「共創型化学会社」として、共創を通じて持続的な成長と企業価値の向上を目指している。2022年度の売上高は約1兆4千億円、うち海外売上高が56%を占め、世界22の国や地域にある製造・販売拠点でグローバルに事業を展開している(2023年1月時点)。

川崎プラスチックリサイクル(ケーピーアール)プラント

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