三洋化成工業は9月4日、使用済のPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂を利用した環境対応型トナーバインダーを開発したと発表した。
レーザープリンターや複写機に使うトナーは、構成成分の約8~9割をトナーバインダーが占めている。
トナーバインダーは、トナーの紙への定着性の付与だけでなく、帯電性、保存性、耐久性や、添加剤(顔料・ワックス・荷電制御剤)の分散性の付与など、様々な役割を担っている。
プリント品質の高精細化、高画質化に伴い、トナーには高性能化が求められてきたが、近年の省エネニーズの高まりを受け、消費電力を抑えるために、より低い温度で溶けて定着するための低温定着性も求められている。
同社ではこれまでトナーの高精細化、高画質化を満足させつつ、低温定着性を実現させるトナーバインダーを開発してきた。
近年の環境意識の高まりを受け、トナーにはさらなる環境対応が求められている。このような背景を受け、同社は高いトナー性能を維持させながら環境負荷低減に貢献するトナーバインダーとして、リサイクルPET樹脂50%以上含有するトナーバインダーを開発した。
通常、低温定着性に優れるトナーにはトナーバインダーとしてポリエステル樹脂が使用されている。そのポリエステル樹脂としては、分子がランダムに配置した状態(非晶性)の数千~数万程度の分子量ものが主流となる。一方、リサイクルPET樹脂は分子が規則正しく整列した状態(結晶性)で、分子量が数十万~数百万以上の超高分子量体となる。
このように両者の特性は大きく異なるため、リサイクルPET樹脂をトナーバインダーに組み込むには、適した特性に変換する必要があった。
同社は長年培ってきたトナーバインダーの知見を生かして、高いトナー性能を維持したままリサイクルPET樹脂を50%以上含有させることに成功した。同開発品により石油由来原料の使用量の削減に貢献することができる。
同社は今後も、リサイクルプラスチックやバイオマス原料をトナーバインダーの原料に転換するなど、環境対応に向けた技術開発を進め、さらなる環境負荷低減に貢献していく。
リサイクルPET樹脂を用いた環境配慮型トナーバインダーの特長は、リサイクルPET樹脂含有率50%以上、リサイクルPET樹脂を含有しない同社従来品と同等の樹脂物性(粘弾性および低温定着性)を示す、樹脂物性や機能付与はユーザーニーズに合わせたカスタマイズが可能という点となる。
2023年09月06日