三井化学と日本アイ・ビー・エムは9月13日、生成AI(ジェネレーティブAI)のひとつであるMicrosoft Azure OpenAIのGPT(GenerativePre-trained Transformer) と、IBMのAIであるIBM Watsonを融合することで、三井化学の製品の新規用途探索における高精度化と高速化を実現したと発表した。
具体的には、三井化学固有の辞書作成数が約10倍に増加、明確に「用途」と記載のあるデータにおいては新規用途の抽出作業効率が3倍に向上、新規用途の発見数が約2倍へ増加、という3つの成果を実現した。
新規用途探索とは、ニュース・SNS・特許などの多様なビッグデータを効率的にAI分析して、三井化学の製品の機能特性に関連するキーワードから、新しい用途を発見するという取り組みとなる。
同取り組みは、三井化学における、事業領域のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進することで、製品のトップライン(売り上げ)やマーケットシェアの拡大を目指すイニシアティブとなる。
IBM Watsonは、三井化学固有の辞書を構築したうえで、特許・ニュース・SNSといったビッグデータを分析する、エンタープライズAI基盤の位置づけとなる。対して、GPT側は、生成/応答/抽出/要約といった機能、高速サーチ機能やインタラクティブ・インターフェースを組み合わせることで、IBM Watsonによる新規用途探索の分析能力を向上させた。
GPT活用による3つの成果は、4ヵ月間での辞書作成数が、従前に比べて約10倍に増加(4ヵ月間あたりの辞書作成数が、従前に比べて約10倍に増えた。これは、従来は分析者が技術資料や論文、Web等の情報を集めて行っていた辞書案の作成を、GPTとの対話を通じて作成したことや、英訳辞書の作成にGPTを用いて、文脈を考慮した高度な翻訳を短時間でできるようになったことで、辞書案数を増加させたことなどによって実現している。)した。
その他、明確に「用途」と記載のあるデータにおいて、新規用途の抽出作業効率が3倍に向上(新規用途探索の用途抽出プロセスにおいて、GPTの抽出機能を活用することによって、明確に「用途」としての記載があるデータのうち、約70%を自動で抽出することが可能となった。これによって、膨大な用途候補キーワードを全て確認する作業の負荷を軽減すること、新しい「用途」キーワードを効率的に発見することが可能になり、新規用途の抽出作業効率が3倍に向上した。)し、新規用途発見数が約2倍に増加(GPT導入の効果として、上記2つの改善効果により、新規用途発見数が倍増した。これにより、より効率的かつ迅速に新規用途を発見すること、また、製品の用途の拡大が可能になった。)した。
三井化学は、今後大きく発展する生成AIを活用し、市場開発から製品開発までのスピードを加速させ、世の中のイノベーションを実現していく。また、日本IBMは、IBM ConsultingのAIに関する豊富な実績や知識とデータサイエンス領域における先見的な知識、実装のノウハウや技術力を活かし、今後も日本企業の生産性向上に向けて支援していく。
三井化学常務執行役員CDO三瓶雅夫氏は、「GPT/生成AIをIBM Watsonと組み合わせることで、この4ヵ月間の実証実験を通じ、新規用途探索イニシアティブにおける自社固有辞書ボリュームを10倍に増量、新規用途の抽出精度を3倍に向上、そして新規用途発見数を倍増させるという成果を実現してきた。新規用途探索は、GPT/AI活用によりトップラインを上げマーケットシェアを拡大するという、当社の長期経営計画VISION 2030におけるポートフォリオ変革を加速するDXイニシアティブとなる。今後はさらにGPTのマルチモーダル機能を活用した当社独自の対話型AIの構築に取り組んでいく。」とコメントしている。
2023年09月14日