レゾナックは9月14日、岐阜大学と三菱化工機とともにアンモニアから水素を取り出すためのアンモニア分解技術において協働して研究開発すると発表した。
水素は使用時にCO2を排出しないため、カーボンフリー燃料として次世代エネルギーで注目されている。火力発電、発電用の 燃料電池、燃料電池車、製鉄等の産業分野などで使われている。
しかし、水素には製造・貯蔵・運搬に課題がある。製造時に、原料として化石燃料を使用するためCO2が発生してしまう。
貯蔵や運搬については技術が難しく、水素を大量に運搬するには液化させたり圧縮させたりする必要がある。マイナス253℃まで 冷却することで液化させるが、大規模な設備が必要となるため、設備コストがかかる。
また、高圧で圧縮(20MPaが中心) してトレーラーで輸送するためには、圧縮機や高圧で貯蔵するタンクなどにコストがかかる。その上、高圧ガスのため安全に輸送 するためには取り扱いに注意が必要になり、技術が求められる。
そこで、三者は、水素キャリアとなるアンモニアを分解する技術において協働して研究開発することを発表した。
水素キャリアとなるアンモニアのメリットは、アンモニアは水素と比較して貯蔵や運搬が容易で低コスト、で、物流2024年問題にも貢献できる。アンモニアは水素と比較して、液化しやすく貯蔵や運搬が容易で低コストであるため、「水素を運ぶ手段」として注目されている。
同社調べでは、液体アンモニアローリー10t車は、圧縮水素トレーラー10台分に相当し、水素キャリアとしての優位性があることが分かる。運搬が1/10で済むということは、コスト面だけでなく燃料の使用量の低減にもつながり、CO2排出量の削減にも寄与する。さらに、1/10 のドライバーの確保で済むことで物流の2024年問題にも貢献できることになる。
同社は長年のアンモニアの製造・販売・輸送ウハウを持っている。使用済みプラスチック由来の同社のアンモニアは、製造時のCO2廃出量 80%強削減できる。
アンモニアは20世紀初頭に確立したハーバー・ボッシュ法という製法で作られており、水素と空気中の窒素を化学反応させて製造する。
しかし、アンモニアの原料となる水素の製造には化石燃料が使われており、製造時にCO2 が発生する。そのため、 化石燃料を使った水素を原料にするアンモニア製造過程では、CO2の発生は避けられない。
同社の「プラスチックケミカルリサイクル事業」(KPR)由来のアンモニアは、化石燃料を原料にした水素を使うアンモニアと比べて、製造過程で排出するCO2などの温室効果ガス(GHG)が80%強削減していることを確認している。まさに、クリーンなアンモニアとなる。 KPRでは、使用済みプラスチックを原料に、高温でガス化し分子レベルまで分解して水素とCO2を取り出している(ガス化ケミカルリサイクル)。
運転中に化石燃料をまったく使わないため、熱交換率は100%となる。ここで取り出された水素の一部は近隣プラントにて化学原料向けや水素ステーションにて燃料自動車向けに活用し、そのほかは主にアンモニアの原料になり合成繊維、 合成樹脂、化学肥料、薬品などに使われる。
一方のCO2は大気中に放出することなくグループ会社でドライアイスや炭酸飲料、医療用炭酸ガス向けの原料に使用するなど、資源循環を実現し持続可能な豊かな社会実現に向け活躍している。同社の高性能なアンモニア分解触媒は、困難であった内陸部への長距離輸送も可能にする。
2023年09月19日