日精樹脂工業(長野県埴科郡坂城町、依田穂積社長)は、「Inclusive Growth(包括的成長)」をテーマに、環境負荷を減らし持続可能な社会を実現するための革新的な環境対応技術や顧客が抱える「成形加工におけるわずらわしさ」を解決するためのソリューション技術、そしてものづくりの高度化を推進するため、ユーザーへ様々な用途提案を行っている。
今期は、今年5月に本格受注を開始したハイブリッド式中大型射出成形機「FWXシリーズ」をベースとした熱硬化性樹脂専用の「FWX760Ⅲ―130BK」と、液状シリコーンゴム専用射出成形機「NEX180Ⅲ―5ELM」に力を入れている。
「FWX760Ⅲ―130BK」は、熱硬化性樹脂専用機としては市場最大クラスの射出サイズで、成形品重量1kg以上の大型成形品に対応している。昨今熱硬化性樹脂にも環境対応のバイオマス由来が登場しており、先日名古屋で開かれたプライベート内覧会でも、住友ベークライト製のバイオマス由来フェノールを使用し、eアクスル用のインバーターカバーの実演をしていた。石油由来からバイオマス由来への原料転換、またアルミや鉄などの金属や焼結カーボンなどをフェノール樹脂に代替することで、軽量化による燃費(電費)向上、CO2の削減に貢献できるという。
一方、「NEX180Ⅲ―5ELM」は、電気式汎用機をベースとした液状シリコーンゴム(LSR)専用成形機となっている。LSR材料は天然由来のケイ石、水、天然ガス由来のエタノールが原料のため、石油資源の依存度が低く環境負荷が小さい。さらに耐熱性や耐候性が優れている。つまり、LSRは環境に配慮された材料のひとつと言える。そのため、同社としては、EVシフトへの対応技術として、同機械を提案していく考えだ。例えば、一般的にバッテリーのセル間スペーサーは エチレンプロピレンゴム(EPDM)が使用されているが、車載バッテリーの次期開発に向けてLSR材料の採用をPRしていく。
同社は以前からLSR成形の実績を有しており、小容量・高圧成形に適したスパイラルプランジャーシステム「SPPS」を開発。同システムはインラインスクリュの可塑化計量時の樹脂移動の良さを継承しつつ、LSRの小容量成形に対応したプランジャー計量射出装置となっている。そのため、高精度な材料吐出が可能となった。
両機械とも環境に配慮し、EV化を推進する成形機として販売増を目指していく。
足元の需要動向は「受注は非常に厳しい状況だ。この状況は弊社だけではなく、射出成形機を扱うメーカー全体が大変ではないか。最近では業界の統計を見ても、月1000台ペースを割り込んでいる。ただ、引き合い件数は高い水準を維持しており、見通しは決して暗くはないと見ている」(同社)としている。 全文:約1176文字