横浜ゴム(株)はAV機器やパソコンで使用されるCDやDVD、ブルーレイディスクなどに使われる光ピックアップに不可欠な絶縁型高熱伝導剤「YB」シリーズの本格的拡販を開始した。
光ピックアップとはCD、DVDなど光ディスクにレーザー光を照射し、データの読み取りや記録を行うための装置のこと。一般に電子部品から発生する熱は部品の信頼性や寿命などに大きく影響するため、放熱対策が非常に重要な課題となっている。特にレーザー光源(レーザーダイオード)は高温になるとレーザーの発振異常が発生する可能性があるため、効率的な放熱対策を行うべく様々な試みがなされているが、その中でもレーザー光の自動焦点調整には極めてハイレベルな精度が要求されるため、光ピックアップ用高熱伝導剤はシート状ではなくペースト状のものが様々な箇所に用いられているという。ペースト状にはグリースタイプもあるが、アウトガス(電子機器に使われている部品や接着剤の有機成分が揮発しガスを発生させる現象のこと)による各種レンズやレーザーダイオードによる化学汚染が問題となっていた。
「YB」シリーズはこれらの問題をクリアした独自の合成ゴムをベースとする1成分形湿気硬化タイプの絶縁型高熱伝導剤で、同社によるとミリグラム単位でのシリンジ吐出性といったペースト状態の流動特性、微小部位への充填性、極限的なアウトガス成分の低減などを高度な次元でバランスさせることに成功したという。
すでに「YB」シリーズは2009年から複数の大手電機メーカーに採用され実績を挙げているが、特に「YB-107(ワイビー・イチマルナナ)」は従来品の「YB-07(ワイビー・ゼロナナ)」の基本性能をさらに向上させるとともに低価格化も実現した改良品で、11月から市場評価が開始されており、2012年春より本格販売への移行を予定している。同社は今後、光ピックアップ向け以外にも様々な電子部品、情報機器、LEDなどの他用途向けの高熱伝導性接着剤の展開も図っていく考えだ。