フッ素樹脂表面改質で新手法 産総研研究グループが発表

2023年09月29日

ゴムタイムス社

 国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)の製造技術研究部門リマニュファクチャリング研究グループの北中佑樹研究員、中島智彦研究グループ長らは9月28日、難接着性フッ素樹脂の表面を粗化することなく接着性の高い状態に表面改質する、大気環境下で簡便に実施可能な新しい手法を開発したと発表した。
 フッ素樹脂は数ある樹脂材料のなかでもこの誘電損失が最も小さい材料の一つであり、次世代通信(ポスト5G、6G)の回路基板としての利用が期待される。一方、フッ素樹脂はモノをはじく性質が強いために異なる材料との接着が困難なため、従来のフッ素樹脂の接着では金属Na処理による表面改質が広く行われているが、表面を深さ100nm以上に粗化してしまうことや樹脂の変質を伴うことが問題となっており、平滑性を損なうことなく接着性を高める表面改質技術が求められている。
 同技術は、平滑な樹脂表面への金属有機酸塩コーティングと光反応を組み合わせることで、樹脂の変質なく粗化も数nmに抑えることができ、次世代通信回路にも応用可能な高い平滑性と強い接着性の両立を実現した。 なお、同技術の詳細は10 月4日~6日に幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催される高機能素材 Weekのブースで展示される。
 今回開発したフッ素樹脂の表面修飾技術は表面粗化度への影響を数nm程度に抑制できており、フッ素樹脂の応用が期待される次世代通信回路基板に要求される平滑性を満足するなど、従来の金属Na処理では適用できなかった用途への展開が期待される。また、溶液塗布と紫外光照射の領域を必要な箇所に限定することもでき、消費する薬剤の量や廃液処理などによる環境負荷も抑制できる見込み。今後は大気開放環境下で簡便に実施可能な溶液プロセスである本手法の利点をより活用し、複雑形状対応や大面積処理、機能材料コーティングで、より広範な用途へ適応する予定としている。

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