東レは10月3日、ガラス繊維強化PPS樹脂(PPS-GFRP)をリサイクルしてもバージン材の初期性能を維持することが可能な新技術を開発したことを発表した。これにより、PPS樹脂のリサイクル率の向上を通じて、CO2排出量の削減に貢献する。
PPS樹脂は、耐熱性、耐薬品性に優れるエンジニアリングプラスチックであり、PPS樹脂の90%以上が、ガラス繊維強化されたPPS-GFRPとして、幅広い産業用途全般に用いられている。また、絶縁特性にも優れることから、今後も、半導体等の電子部品分野やEV車部品分野での拡大が見込まれ、使用後の再利用のニーズも高くなっている。
PPS樹脂自体は、長期間の使用後も劣化しにくい特長を有するが、リサイクル工程において、配合しているガラス繊維が短く折損して、機械強度が大幅に低下する課題がある。そのため、リサイクル品は、要求品質の低い用途に用いられており、リサイクル率向上の障害となっている。
今回同社は、独自のコンパウンド技術を活用して、PPS樹脂に特殊強化繊維を配合したマテリアルリサイクル用ペレットを開発した。これを、リサイクル品とブレンドし使用することで、樹脂成形品においてリサイクル材を使用した場合でも、バージン材と同等物性を維持することが可能となり、元の用途で使用する水平リサイクルなど、幅広い用途での再使用が期待される。
本技術により、リサイクル材を50%以上使用した場合でも、バージン材100%品と同等の機械強度を発現できることが実証済みであり、リサイクル材使用率50%の場合、CO2排出量を40%以上削減することが可能となる。
現在、マテリアルリサイクル用ペレットに含まれる樹脂および添加物の設計など、バリエーションを拡充させる技術開発を行っている。今後は、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を用いた予測技術も活用して、顧客の要望特性を満たす最適なペレットのブレンド比率や処方を設計した上で、リサイクルPPS-GFRPの供給を目指す。
同社はすでに、成形メーカーなど、数社のパートナー企業と連携し、同技術を用いて、顧客の工場で発生した工程端材を基にマテリアルリサイクル用ペレットを配合したリサイクルPPS-GFRPを供給するなど、クローズドリサイクルの取り組みを開始している。また、顧客と連携した水平リサイクルの実証実験や事業化の準備を進めている。
今後、より多くのパートナー企業とリサイクルスキームの構築を進め、さらに市場回収材を対象としたオープンリサイクルへの適用に繋げることで、持続可能な社会実現への貢献を推進する。まず国内の顧客を中心にサンプルワークを展開し、リサイクル素材・製品の全社統合ブランドである「Ecouse TORELINATM」として、販売する計画。
同社は、「東レグループサステナビリティ・ビジョン」において、「資源が持続可能な形で管理される世界」を、2050年に目指す世界のひとつとしている。今後も、顧客の環境配慮型樹脂のニーズに応えていくことで、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでいく。
2023年10月04日