三菱ケミと北海道大研究グループ 新たなPBS分解酵素発見

2023年10月17日

ゴムタイムス社

 三菱ケミカルグループは10月16日、北海道大学大学院水産科学研究院の澤辺智雄教授と同社の研究グループが、海洋での分解性が乏しいポリブチレンサクシネート(PBS)に対し、分解性を示す海洋細菌ビブリオ・ルバー(V.ruber)を発見し、さらに本海洋細菌から新たなPBS分解酵素の特定に成功したことを発表した。
 海のプラスチック汚染は世界規模課題の一つであり、様々な技術を駆使して解決策を見いだしていく必要がある。生分解性プラスチックの開発はその解決策の一つ。ポリ3-ヒドロキシ酪酸(PHB)やポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)などの海洋環境下で生分解するポリマーが開発されている一方で、土壌やコンポスト環境下などではよく分解されるにも関わらず、海洋域では生分解性が減弱すると評価されているポリマーも数多く知られている。PBSもその一つで、バイオ原料由来のコハク酸を活用したPBSは生分解性バイオマスプラスチックの一つとして知られている。PBSの海洋環境下での難分解性の要因究明には、PBS分解性海洋微生物やそれら由来の酵素を特定し、それらの基本性質を解析することが必要。
 同研究では、まず、北海道沿岸から採取した海水中にPBSフィルムを浸漬させて培養したところPBSの分解と資化が認められた。このフィルム上では、ビブリオ科細菌の存在量が高まっていた。次に、様々な細菌を探索し、V.ruberがPBSを分解できることが分かり、かつ、V.ruberのゲノム配列から新規なPBS分解酵素遺伝子の特定に成功した。さらに、V.ruberのPBS分解酵素を、大腸菌を使って生産させ、この組換え酵素の高度精製にも成功した。このV.ruberのPBS分解酵素はPBSフィルムを分解可能で、既知のカビ由来酵素よりも分解活性が高いことが分かった。
 同研究結果は、海洋細菌由来のPBS分解酵素を特定した初めての成功例。このV.ruberのPBS分解酵素の三次元構造をシミュレーションしたところ、既知のPET分解酵素の構造と極めて類似しており、本酵素によるPET分解能も期待される。また、持続可能な社会形成に資するプラスチックリサイクルのさらなる発展や、海洋環境におけるPBS分解促進化技術開発への貢献が期待される。
 同研究成果は2023年9月29日(金)にEnvironmental Microbiology誌に早期公開された。

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