金陽社(東京都品川区、服部琢夫社長)の23年度上半期は前年同期比で増収となった。「ロール部門は全体で減収となったものの、ブランケット部門の売上が好調に推移したことが増収につながった」(同社)。
ロール部門は、印刷向けは若干の減収となった。積極的な拡販活動を行ったものの、業界縮小の影響などを受け、一般商業向け、新聞向けを中心に低調に推移した。一方、フィルム向けや鉄鋼向けなどの工業用は前年並み。OA用は一部顧客の在庫調整や生産減少の影響を受け、前年同期に比べて大きな減収となった。
現在、拡販に注力するのはフィルム用では「金属表面ゴムロール」と「スキンコアシリーズ」を挙げる。金属とゴムの利点をあわせ持つ金属表面ゴムロールは、ゴム表面に極薄の金属を被覆しているため、耐摩耗性に優れ、ゴム層に含まれる微量な物質の抽出を抑制する。さらにロール表面が柔らかく変形し、ニップを形成できる。フィルムライン巻取りタッチロール、フィルム製膜キャストニップロール、ラミネートロールなどでの採用を期待する。
「スキンコア」は、鉄管やFRP管にゴムをライニングし、コア表面にクッション性を持たせた巻取りコアだ。同コアは基材の巻取りはじめの段差痕を軽減する効果があり、「フィルムの取得率改善につながったなど、顧客の評判は上々」(同社)だ。プラコアへのゴムライニングが可能な「スキンコアK」は耐加水分解性に優れる材質で、長寿命化が期待できる点が評価されるなど順調に採用が広がっている。
フィルム関係では「異物の混入」「シワの発生」「基材巻取り時はじめの段差痕の発生」に課題を抱えた顧客が多い。同社はこれらの3つのお困りごとそれぞれに対して対策品を取り揃えており、「ゴミ取り」「シワ取り」「巻き取り」の「3取り」と位置づけて、ゴムロールのプロとして、顧客目線での解決策の提案に注力している。
その他、鉄鋼用ではスーパーグリップやアブレスに注力している。スーパーグリップは、高摩擦、耐摩耗性を特徴とし、鋼鈑製造工程のドライ&ウェット状態でも基材が滑らず、薄板に傷が付かない、さらに、滑らない為にロール摩耗が少ないので、お客様の巻き替え寿命が10倍長くなった実績がある。
23年度下期のロール部門は、印刷用はUV分野を中心にシェアを高め、安定した受注を狙う。工業用はフィルムや鉄鋼向けを中心に拡販活動を展開し、工業用全体での増収を目指す。その中で懸念材料は、世界経済の減速や、原材料価格やエネルギー価格の高騰を挙げる。特に、原材料価格やエネルギー価格の高騰影響は、昨年度後半からより顕著に出ている。一層の生産合理化や製品価格見直しなど、「あらゆる対策をとることで難局を乗り切る必要がある」(同社)と考えている。
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