23年ゴム業界10大ニュース AI活用企業が増加

2023年12月12日

ゴムタイムス社

 ゴム企業にとって23年は新型コロナ感染症による行動制限が緩和され、国内景気は持ち直しの動きが見られた。半導体の部品不足緩和から自動車生産は年後半に回復に向かうほか、為替の円安進行で輸出は堅調に推移したが、原材料価格やエネルギーコストは高止まりしており、ゴム企業の収益にも影響を与えた。
 一方、企業のAI活用の推進や革新的な材料開発、バイオマス製品の上市、持続可能な社会実現に向けたとりくみや生産性の向上を前進させた1年でもあった。

 ①ゴム企業9割増収も営業減益が過半に 
 主要上場ゴム関連企業の23年3月期連結決算は、21社合計の売上高は3兆4297億9900万円で前期比11・4%増となった。21社のうち増収企業は19社(前年同期は15社)で全体の9割を占めたが、営業減益企業は11社となった。
ゴム産業の主要業界である自動車業界は、中国のロックダウンや半導体などの部品不足の影響を受け、国内・海外での生産が一時落ち込んだ。ただ、年度後半は半導体不足の緩和や個人消費の回復もあり、自動車生産台数は前年同期に比べて回復基調を示した。自動車生産の回復に加え、原材料価格高騰に伴う製品価格改定の実施、さらに為替の影響で海外売上高が伸長したことも多くのゴム企業が増収となった要因とみられる。

 ➁JSRが政府系ファンド傘下へ
 JSRは政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)の100%子会社であるJICC(JICキャピタル)による同社株式等に対する公開買い付け(TOB)に関して賛同表明すると発表。TOB成立後はスクイーズ手続きを経て、JSRは上場廃止となり、JICCの完全子会社となる。JSRのエリック・ジョンソンCEOは、「コア事業であるデジタルソリューション事業の半導体材料は、グローバルで規模拡大の競争が激しさを増しており、研究開発も大規模な投資が必要。当社が長期的にグローバルで競争力を維持し、成長するためにも必要な判断だった」と今回の非上場化の理由を説明した。

 ③ブリヂストンの売上収益初の4兆円超に
 ブリヂストンの22年度の売上収益は4兆1100億7000万円で前期比26・6%増となり、調整後営業利益は4826億2900万円で同22・4%増となり、売上収益は同社初の4兆円超となった。石橋CEOは「原材料やエネルギー費用の高騰など激動の年となったが、コア事業のタイヤ事業ではプレミアム領域を中心にグローバルで拡売に努めたことや為替も追い風となった」と総括した。

 ④AI活用進む
 ゴム・プラ企業でAIを活用した取組みが増加している。住友化学は生成AIを活用した同社版「ChatGPT」として「ChatSCC」を開発し、約6500名の全従業員を対象に運用を開始した。足元では生産性の飛躍的向上を実現するとともに、将来的には同社独自データの有効活用による既存事業の競争力確保、さらには新規ビジネスモデルの創出へとつなげていく。
 東洋紡はグループ会社の東洋紡エムシーの岩国サイトに、西日本旅客鉄道が画像解析AI技術を応用して開発した「AI検品ソリューション」を導入。AI技術の活用により、スパンボンド不織布の製造ラインの検品工程における目視作業などの負担を軽減し、検査担当者の作業時間を年間1000時間以上削減する効果が見込まれる。
 帝人は社内業務の効率化を目的としたグループ社員向けの生成AIサービス「chat テイジン」を導入した。日常業務のうち、文章の作成・翻訳・要約やデータの分析などに活用することで生産性向上を目指す。

 ⑤タイヤメーカー材料開発

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