日本ゼオンのエラストマー事業部は合成ゴム、ラテックスの分野で展開する。
合成ゴムの上半期の需要動向を振り返ると、汎用ゴムは新車向けが半導体不足の解消に伴い、出荷は堅調に推移したものの、中国の景気の回復の遅れから輸出の動きは鈍い。ただし、インドやインドネシアは堅調であったほか、米国も底堅い需要だった。
また、特殊ゴムで同社が注力するHNBRの「Zetpol」とACMの「Nipol」は、国内若干弱含みだが、東海地区は想定よりも回復している状況だ。海外は非常に需要が旺盛となっている。その要因として、同社は「中国で電気自動車の生産が落ち込んでおり、一部内燃機関の自動車の供給が戻ってきた。また、欧州で有機フッ素化合物(PFAS)規制の影響から新しい需要が一部発生している」と捉えている。
生産拠点では、タイのACM工場は高い稼働率を維持し、「AEMの代替が進み、当初計画していたよりも上振れした稼働率となっている」(同)とのことだ。
ラテックスについては、コロナ禍で発生した手袋の特需により、在庫過多となっているため、「長い目で見れば手袋の需要は伸びていくだろう。ただ、実需以上に、世界中で各メーカーの生産能力で補えてしまう状況で競争が激化していく。そのため、固定費や生産集約でコスト競争力をつけていく」(同)考えだ。
今後の展開として、汎用ゴムは中国のエチレンの内製化が進んでいることもあり、今後、採算が取れなくなる可能性が高いと捉えている。そのなかで、「どのようにして、サステナブルに事業継続していくか」(同)を課題として挙げる。一方特殊ゴムでは、ZetpolとNipolは引き続き顧客の需要をしっかり取り込む。またZetpolは堅調な需要に対応すべく、テキサス工場の能力増強をスケジュール通りに立ち上げていく。また、Nipolは、タイ工場ではまだ能力があるため、フル稼働を目指していく。
同社はサステナビリティ推進を見据えたうえで、自動車メーカーやタイヤメーカーが今後、地産地消の動きを加速させることを予測し、国内の合成ゴムサプライヤーとして、中長期的に安定供給する役目を担える体制の構築を進めている。また、カーボンニュートラルへの実現に向けて、名古屋でカーボンニュートラルに対応した新組織を立ち上げており、「現在、お客様に様々な提案をしながら、対話を進めている。素材メーカーとして、素材そのもの及び製造におけるCO2をできるだけ減らしていく。これはメーカーの最大の付加価値になる。そのため、お客様と積極的に対話をしていくことが重要だ」(同)という。
下半期は、「中国の景気動向次第によるが、海外は少しずつ回復していく。国内も自動車生産が向上し、流通在庫も正常化するのではないか」(同)との見方を示している。
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